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【Vol.512】冷泉彰彦のプリンストン通信『アメリカ政治の現実乖離』(改行なし版)

冷泉彰彦のプリンストン通信
「岸田内閣はどうして「ガッカリ」の大量生産を続けるのか?」 (前略)  マーケティングの理論の中に、「消費者の信頼を得るには何年もかかるが、失うのは一瞬」という言葉があります。また「消費者は爬虫類、瞬時の判断で食いつくし、駄目となったら見向きもしない」ということを言っていた専門家もありました。これは少々消費者をバカにした態度とも思えますが、いずれにしてもマーケティングとは心理戦だというのは否定できない事実です。  岸田政権がダメダメなのは、このことを全く理解していないからです。  例えば、給付すると言い、その後でその財源がないので増税すると言い、そこで差し引き全く恩恵がないと批判されると、では減税するという、一連の流れがいい例です。つまり納税者の心理を先取りすることができず、「かえって逆なでする」ようなことばかりをしているわけです。  岸田氏には「増税メガネ」というニックネームがつきました。それは「国民の嫌がる増税をやり、将来のために財政規律を確保する、冷酷な為政者」という意味ではありません。納税者の心理が分からずに迷走する、その無能ぶりに国民が信頼できないという厳しい「ノー」であるわけです。そして、悲しいことに、岸田氏はその「ノー」というメッセージの厳しさも理解できないし、感じられないようです。  その証拠に、その後も似たような「納税者の怒りに油を注ぐ」ことばかりをやっています。具体的には、給付すると言っておいて、その給付先に増税するとか、制限をつけるという方法です。  まず、児童手当を「高校生まで支給延長、所得制限撤廃」という政策を発表しました。それも「こども未来戦略方針」などという格好のいいネーミングをつけた上での発表です。このニュースを聞くと、もうすぐ子どもが高校生になる家庭は喜んだわけです。  ところが、これに対しては与党の税調が「高校生の扶養控除額を削減する」と言い出しています。つまり、高校生のいる家庭に対しては増税するというのです。何か給付をするのには財源が必要です。ですが、給付の対象そのものに対して、増税をして財源にしたのでは、何のための給付か分からなくなってしまいます。少なくとも、世論に歓迎されるように実施たはずの政策が大きくイメージダウンします。  勿論、高額所得の家庭のことを考えて、全体的な公平性を確保したいという理屈があるのは分かります。ですが、とにかく発表の方法が稚拙です。良いことがあると宣伝しておいて、その全く同じ対象者グループに実は「悪いこと」もあるといって「良いこと」からマイナスするというのは、マーケティングではタブーです。心理的に悪印象になるからです。  岸田政権のやっているのは、そんなことばかりです。例えば、第3子への児童手当は増額して「高校を卒業するまで3万円」などというのも裏がありました。そう言っておきながら、第1子が18歳になると、子どもでなく成人になるから、その場合は第3子は第2子になるので3万円はストップというのです。  3人子供のいる家庭は大学まで無償化するというのも同じです。第1子が大学を卒業して就職して扶養家族から外れると、その家庭は「3人子どもがいなくなる」ので、無償化はストップする、つまり2人分が一気に有償になるというのです。  とにかく、こんなことばかりです。(続く)

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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