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伏木悦郎のメルマガ『クルマの心』
第531号 2023.10.3配信分
●『六本木カローラ=BMW3シリーズ』あったよな、そんな話。
8代目日産スカイライン(R32型)が発売されたのは1989年5月。
3ヶ月後に発売中止から16年を経て登場したスカイラインGT-R
(BNR32型)が追加されている。
時あたかもバブルの真っ盛り。巷は好景気に沸き、全国の歓楽街
は空前の活況を呈していた。その一方で同年1月7日に昭和天皇の
崩御があり、前年秋から続いた自粛ムードから一気に喪に服する形
となる。表向きは好景気の勢いを削がれる形となったが、少なくと
も自動車メディア界ではバブルの狂騒の渦中にあった。
この年私は両手に余る海外取材に招かれている。結果的にCar of
the yearに輝いたトヨタ・セルシオ(レクサスLS400)のドイツ・フ
ランクフルトを基点に行われた国際試乗会を始め、同じくブランニ
ューのスバル・レガシィは同じ右ハンドルのオーストラリアで海外
試乗会を催している。記憶に残るところではホンダがアデレードで
開催されたF1オーストラリアGPの観戦やら、ゴールドコースト
までプライベートジェットを仕立て、トローリングに興じたり。
自慢話を振りかざしているみたいで気が引けるが、バブルの恩恵
を前身に浴びていた記憶が過る。G5プラザ合意に端を発する円高
/ドル安の為替環境は、投資対象を見失った金余り現象をもたらし
不動産や株式の高騰を招き、遅まきながら日本のOEMメーカーも
円高メリットを活かすべく現地試乗会を始め海外での取材機会を増
やす傾向が見られた。
円高容認のプラザ合意直後は、輸出産業の停滞を予測する筋から
不況を危惧する声が続出した。実際私自身も某メーカーのベテラン
広報マンから「大変なことになった」不景気予測を口にする声を直
に聞いている。反面、欧州勢にとって円高は輸入車の実質的な値下
がりを意味する。
それまで輸入代理店に任せ、輸入車は基本的に高価なものとして
独得という文化を築いていたが、欧州(特にドイツの)プレミアム
ブランド系OEM各社は、それぞれ独自の販売子会社を設立する。
日本に外国車”ブーム”が訪れたのは実はこの時から。以来かつて
は舶来品として特別な価値を持つ存在として一目置かれた存在も、
『六本木カローラ=BMW3シリーズ』や『子ベンツ=メルセデス
ベンツ190E』と揶揄されるまでになった。
すでに30年以上も前の昔話であり、今ある状況がずっと以前から
そうだったかのような印象を持たれる向きもあろうが、ここは冷静
に振り返る必要がある、と思う。
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