抜本策とらずに責任回避
現役世代1%デフォルト
住宅値下がりで消費収縮
党の元老が正常化へ圧力
習近平国家主席は、中国の進退窮まった経済の現状に対しどのような認識であろうか。もちろん、悪化しているという認識のはずである。だが、習氏は抜本的な対策に出る可能性が少なく、国民の間に広がる不平不満を権力で押さえつけることに全力を挙げている。「臭い物に蓋」である。
中国国内では、すでに「中国衰退論」が幅広く流布されている。中国政府は、スパイを取り締まる国家安全省が、この「中国衰退論」を取り締まると示唆しているほどだ。理由は、「中国経済をおとしめる様々な常套句が次々と出現し、『中国衰退』という虚偽の言説の流布によって、中国の特色ある社会主義体制を攻撃し続ける」という被害者意識である。
青年(16~24歳)失業率は、今年6月(21.3%)を最後に発表が中止されている。例年6月は、大学の卒業時期で失業率は高まるが、その後のデータ改善がなかったのであろう。悪いデータを公表すれば、世論が動揺するものとみたに違いない。青年失業率の悪化は、雇用全般が不安定になっている証拠であり、後で取り上げるように個人債務の不履行(デフォルト)を急増させている。
こういう身近なところで起こっている経済不安に対して、政府は「中国衰退論」を流布した者を罰するという不条理なことを始めている。これと同時に、来年1月1日に愛国主義教育法を施行する。中国当局は、「学校教育の全プロセスで愛国主義を徹底する」と強調するのだ。新法は、「祖国統一の完遂」について台湾同胞を含む全国民の理解を高めるとも明記している。台湾統一に向けて、愛国心を鼓舞する狙いである。
習指導部は、国内に充満する経済不安を権力で取締り、愛国教育で隠蔽しようとしている。戦時中の日本国民が、あじわされたとあの同じコースを歩み始めた。中国の将来が、おぼろげながらも示唆されている感じがするのだ。
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