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「医学と哲学のはざまの精気:ドメニコ・ベルタッキの『精気について』(1584年)」(前編)

BHのココロ
  • 2024/01/02
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あけましておめでとうございます。今年も皆さま、よろしくお願いします。今回のメルマガは、2023年12月に中世哲学研究の聖地であるベルギーのルーヴァン大学で開催れた国際会議「スピリット:古代から初期近代までの物体性と非物体性の境界を地図化する」で招待発表した原稿を邦訳した前半部分をお届けします。比較的に医学史よりの発表が多いなかで、哲学と医学の交錯を描こうとした一本です。 「医学と哲学のはざまの精気:ドメニコ・ベルタッキの『精気について』(1584年) 1. はじめに  精気の概念は、中世ヨーロッパの諸大学における医学教育で根幹を占めるものだった。精気は、生物の身体に拡散している目に見えない、希薄な蒸気状の物質だと信じられていた。しばしば「霊魂の第一の道具」と呼ばれ、生理的な諸機能をつかさどり、霊魂と身体を媒介するものだとされた。ルネサンス期になると、医師たちだけではなく自然哲学者たちも熱心な論争を展開し、この伝統的な見解は重要な変化をみせることになる。  イタリアの医師ドメニコ・ベルタッキ(Domenico Bertacchi, ?-1596)はトスカナ地方の都市ルッカに近いカンポルジアーノの出身で、精気の概念についての重要な小著を執筆している。それは『精気についての四書』De spiritibus libri quatuor と題され、ルネサンス期の諸論争が頂点を迎える時期である1584年にヴェネツィアで出版される。  今回の報告では、医学と哲学の交錯という観点からベルタッキの主張を分析したい。この目的のために以下では、16世紀に精気の概念について医学的かつ哲学的な論争をひき起こした主要因の幾つかについて、まずは簡単にまとめることにしよう。つづいてベルタッキの著作を考察して、その目的とルネサンス期の論争との関係について明らかにしたい。 2. フィチーノ、フェルネル、そしてパパレッラ

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