メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

【死んでも書きたい話】 拘束場所を看守がペロッと話してしまう

安田純平の死んでも書きたい話
あっという間に大晦日になってしまいました。今年もお世話になりました。 昨年からのロシアによるウクライナ侵攻から、ハマスによるイスラエル側襲撃とイスラエルによる攻撃と、大きな戦争とひどい被害が続いています。どちらも状況が改善する兆しは見えず、一時的な停戦が結ばれるとしても、良い方向に進むとは思えません。どうにも希望の見えない年越しとなってしまいました。 私個人としては、シリアから帰国して5年がすぎ、旅券発給拒否の根拠とされている「トルコが5年間の入国禁止」が切れたため、旅券が発給されない理由が消えました。実際にどうなるかは分かりませんが、法的には拒否に該当するものはないはずです。 旅券発給拒否をめぐる裁判を続けてきましたが、今年10月に結審し、来年1月25日に判決が出ます。発給拒否の理由がすでにないはずなので申請すれば出る可能性も一応ありますが、まずは判決を待つことにしました。 裁判では、旅券の発給と、旅券法13条1項1号の「渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者」には旅券発給しないことができるという意味不明な法律の違憲性、私の件をこれに当てはめたことの違法性を問うています。 外務省の気分で気に入らない国民の旅券を発給拒否したり没収したりできるという、およそ民主主義国家とは思えない異常な法律をこの世から消すことができるかどうかの重要な判決になると思っています。 弁護団には裁判所から「傍聴券を出したほうが良いですかね。注目されている裁判ですよね」との相談があったそうです。せっかく抽選なので、外れた人には申し訳ないですが、外れる人が出るくらいに集まっていただけると盛り上がって良いかなと思います。 来年こそは、2015年から続いている拘束状態から解放されると期待しています。みなさまにもおかれましても、よい一年を迎えられますように。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 今回は日記の2016年7月26日から同8月1日までです。 よろしくお願いいたします。 【2016年7月26日(火曜日)】 筋トレ休み。0:00に横になったらすぐ眠れ、断続的に目覚めたが11:00近くまで眠る。徹夜続きで、昼寝てるようで寝不足だったか。しかし寝て起きても気分は優れない。隠したノート見つかって「帰さない」になったか?そもそも帰さないのか?トマト、きゅうりをすぐ持ってこなくなったし。無期限だから「金かけるな」になったのでは?もうひたすら筋トレして過ごす以外ない。せめて英語の本でもくれればいいが。 隣と話せれば有意義にできそうなのに。昨日は若い声はせず、何かこもったような声で聞こえにくくしたのかと思うほど。12:30、甘いペースト。熱い。 ※小麦を粗挽きにした「セモリナ」のプリンで、英語ではmamouniaと書くようだがシリア人に聞くと「マモニー」と言うしそれで通じる。日本語のネットでは「セモリナプリン」と検索すると見つかるが、「マモニー」とかでは出てこない。 https://chefindisguise.com/2014/10/19/mamonia-syrian-semolina-pudding/ 収容施設のマモニーは固まってはおらず、茶色に近い色でドロドロとしていた。プリンというよりは日本の汁粉のような味と食感で、熱いと舌を火傷しそうになるところもも似ている。これを食べるたびに日本を思い出した。 プリンは基本的に蒸して固めるもののはずだが、どう見てもゆでた料理だったので「セモリナプリン」とは違う食べ物という気がする。シリアに詳しい日本人に何人かに聞いたが「知っている」という人にはまだ出会っていない。※ もうトマト、きゅうりは来ないらしい。オレのところだけでなく、他にも同じようにこの男が配っているのでは?隣も「ホブスいるか?」に対して「カモン」とか英語で言ったような?隣も外国人?やはり特別扱いは終わりか。ノートがまずかったか。こいつらが殺すわけないのか。金目当てなのだから。しかし、金のあてあるのか? 隣に来てすぐここに来ないのはやはり別人な気もするが、「それで十分か?」とオレには聞いてきたがアラビア語だった。他には聞いてない気はするが。隣の家族はどうも音が遠くなったような。壁に何かつけて音を遮断した? 昼また寝てから14:00過ぎに奮起して筋トレ。やればやれる。やると少し気が上がる。水浴びしてペースト飯。意外と多い。16:00、他と同時に飯。男が少量のイモ煮とトマト2つ。今までで一番少量。他は乱暴な口調の奴で、やはりオレだけこの男か。しかしどんどん簡素化。良い兆候ひとつもない。「とりあえず入れとけ」の後に何も言ってこず、こいつらも「いつまでなのだ?」の状態か。やはりノートのせい?オレのノートなんて日本人でも読めんぞ。 とにかく筋トレしまくって過ごすしかない。とにかく取材して帰るつもりで体力回復させる。まだ2セット続けてできない。まだ全然戻ってない。 特別扱いなくなったのは確かだろう。全く目処ないということが。「25」というのは前の民家にいた男の妄想か。隣はオレに話聞こえないように離れた場所で話してるのかも?右の独房は前はもっと若い声で看守に「ナアム」と返事していた。今は結構年配な声。アラビア語で話している。入れ替わり結構ある? 礼拝の人数の多さ、声の響き方を考えるとやはりここはモスクか?隣が年寄り1人とすると人身売買とも思えない。犯罪者を独自に収容しているのでは。モスクが独自に裁き、刑務所も兼ねているととすると、やはりイスラムが治安維持に機能しているということに。どう見ても新たに作った独房で、治安組織がなくなって、こうした施設を新たに作ったのでは。 モスクで金集めをしているこいつらは刑務所管理もしていると。しかし、隣の家族がやはり意味不明。しかし、英語できるのが来て家族と半ば相談に乗ってたのは、そういう話だとスッキリする。監禁しているとしか思えんが。とするとオレも永遠ではない? 前の民家までいた看守で自称元司法書士のジャシムは「モスクで金集めても大して集まらない」と言っていた。こうしたモスクがやっているのだろう。何もしてないモスクで金だけ集めようなんて無理だろう。脱走してモスクに逃げ込んでたらエライことだったわけだ。どのモスクもほぼどこかの組織の支配下では。人前で日本人を拘束できるかというのはあるが。

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • 安田純平の死んでも書きたい話
  • ジャーナリスト安田純平が現場で見たり聞いたりした話を書いていきます。まずは、シリアで人質にされていた3年4カ月間やその後のことを、獄中でしたためた日記などをもとに綴っていきます。
  • 550円 / 月(税込)
  • 不定期