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【Vol.515】冷泉彰彦のプリンストン通信『緊急提言、能登半島地震』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「2024年、日本経済について考える」 (前略) この2024年に向かって考えているのは、3つのことです。  1つは、変われない人、変われない組織に期待するのは止めるということです。トヨタはもう株主比率からも、消費者の比率からも日本の企業ではありません。ですから、仮に「全固体電池」の開発に成功して、EV市場を「後出しジャンケン」で席巻できたとしても、日本国内の雇用やGDPには寄与することは限定的な範囲なのだと思います。そんな企業に期待しても無理なものは無理だということです。  変われない人というのも同じです。DXは嫌い、スマホも嫌い、紙がないと信用できないし、株は怖いというような人は、そういう人として時代の向こうへ動いていって貰うしかないのだと思います。除夜の鐘が嫌で警察に通報する人が今年も問題になりましたが、こうしたケースは支援や介助の対象でこそあれ、通報を真に受けていては社会が壊れてしまいます。その辺の冷静な見極めというのはリソースやカネについて有限な中で考える場合には必要になります。  反対に、希望というのは、どう考えても日本国内の文化や経済活動の中にある、原石を見出して、これを徹底的に磨いていく、同時に守旧派の攻撃から守り抜くという行動の延長に見出されるのだと思います。  2つ目は、とにかく日本の国内GDPとキャッシュフローを少しでも向上させるということを、優先して判断をしてみたいということです。確かに物販の通販で、利益をAMZが持って行ってしまうのは悔しいですし、官民のクラウドがシリコンバレー勢力に依存するのも筋違いという思いはあります。ですが、それでも設備投資が国内に来て、経済が回るのであれば、そして当事者の合理的な判断としては成立するということならば、国内GDPの観点から認めるものは認めるのもアリと考えてみようかと思います。  3つ目は、とにかく現実を見てゆくということです。理念の視点からは、視野内の交通整理はできても、把握には死角を伴います。また理念の視点には強い色フィルターがかかっていて、彩度は簡単に飽和するし、ある種の色温度については差異が判断できなかったりします。視点も、視野角も、彩度も明暗も、とにかく幅広く取りながら事象を多角的に見てゆくことを、今年はもっともっと心がけたいと思うのです。  最初の問題提起に戻りましょう。日本の場合は「不景気がずっと続いている」のではないのだと思います。何かが本質的なレベルで間違っているのです。例えばですが、中国の明王朝が万暦の時代以降延々と時間をかけながら崩壊していったような時間感覚です。  ローマが東西に分裂し、生き残った東が徐々に衰退していった歴史も想起されます。中国に話を戻すのであれば、雍正帝として知られる愛新覚羅インシンという政治家が死去して以降、清朝が、いや中華帝国が200年の低迷に入っていったという歴史もあります。  そのような文明のレベルにおける「不適応」というのに日本は入り込んでしまっているのかもしれません。であるのならば、改めて目標を下げて、この社会が生き延びるために、本当の現実を見極めて現実的な策を考えていく、これが私達に課せられた課題なのだと思います。1980年代の後半に何かを間違えた日本は、以降、自分たちでも分からないままに、延々と判断の間違いを続けている、まずは、その激しい降下を止めなくてはならないのだと思います。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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