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ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)2024年1月7日(日)号

ジャーナリスト伊東 森の新しい社会をデザインするニュースレター(有料版)
--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- “アルゼンチンのトランプ氏”右派のミレイ氏が新大統領に就任 ミレイ氏とは? 混迷するアルゼンチン経済を救うことはできるか? -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 11月19日に行われた南米アルゼンチンの大統領選挙で、53歳の極右独立候補、ハビエル・ミレイ氏が決選投票で勝利した。  一方、前アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏は、ミレイ氏の勝利を喜び、「アメリカを再び偉大にする」という自身のスローガンを引用しつつ、ミレイ氏が「アルゼンチンを再び偉大にする」と述べたことで称賛する(1)。  選挙は、アルゼンチンのインフレや経済危機の不安が高まる中で行われる。そのようななか、ミレイ氏はリバタリアン(自由至上主義者)であり、中央銀行の廃止などを公約に掲げ、変革を求める有権者から支持を得た。  ミレイ氏は12月10日に大統領に就任。そして、政府は自国通貨ペソを対ドルで54%切り下げると発表した。ミレイ氏は数十年来のアルゼンチンの経済危機からの脱出を公約にしており、この措置は「経済的なショック療法」の一環だと主張する(2)。  2019年以降、アルゼンチンは通貨の動きを厳しくコントロールし、人為的なペソ高を維持してきた。それにより非公式通貨市場では米ドルの需要が高まり、ペソは公式レートよりも低いレートで取引されるように。  昨年、アルゼンチンでは物価が約150%上昇し、高騰が続く。また、現金準備金の少なさや政府債務の増加、あるいは40%の国民が貧困線以下で生活するなど、さまざまな困難に直面する。  他方、国際通貨基金(IMF)はアルゼンチンへの440億ドルの融資を行っており、通貨切り下げを「大胆な措置」と評価、民間セクターの成長を促す環境づくりに役立つと述べる。  一方、ミレイ氏が掲げる通貨ペソ廃止による経済のドル化や中銀廃止といった極端な政策については、法的な手続きが必要になるものの、新政権を支える与党は議会では少数派に留まり、その実現性は不透明だ。 目次 ・ミレイ氏とは ・「中央銀行廃止」「通貨のドル化」はどうなる? ・経済危機 ・ミレイ氏とは  ミレイ氏は、「政界のアウトサイダー」を自認。選挙戦では、歳出削減の意味を込めて集会でチェーンソーを振り回し、「チェーンソー候補」の異名をとった(3)。  選挙期間中は、日本のアニメを活用。 選挙中のミレイ氏のX(旧ツイッター)の投稿には、決めぜりふの「自由万歳だ、この野郎!」の文言とともに、漫画「ドラゴンボール」の主人公、孫悟空に扮したミレイ氏が、当時の閣僚や大統領選の候補者に対し、必殺技「かめはめ波」を撃とうとしている画像も登場。  あるいは、アニメ「チェンソーマン」のポチタというキャラクターの人形を掲げていた(4)。  経済危機にあるアルゼンチンでは貧富を問わず、市民に大きな怒りや失望が渦巻く。右派の前政権と左派の現政権で経済が悪化。インフレで年末に食費を払えるかもわからない恐れもあった。異なる二つの政治勢力に希望が見いだせない時に、ミレイ氏のような「第3の候補」に支持が集まるのは必然なことであっただろう。  ミレイ氏は、父親はバスの運転手、母は専業主婦という中流家庭に生まれた。父親の家庭内暴力や学校でのいじめに直面して難しい青年時代を過ごす。プロサッカーチームのユースに所属し、ゴールキーパーとして将来を嘱望された時代も。しかしあごの骨折などもあり、大学への進学を決断した。  1993年にベルグラノ大学の経済学部を卒業した後は、経済学者として活動した。テレビ番組への出演で知名度をあげ、2021年に下院議員に転じたばかり(5)。 ・「中央銀行廃止」「通貨のドル化」はどうなる?  一方、ミレイ氏は選挙期間中、通貨のドル化や中央銀銀行の廃止を主張してきた。就任演説で、ミレイ氏は、 「(左派の)前政権は我々をハイパーインフレに向かわせ、インフレ率は年間1万5千%に達する可能性がある。大惨事を避けるために全力を尽くす」 (6) と主張。  しかしながら、大統領選に当選したのちは、これらの政策に向けた具体策についてほとんど言及していない。  一方で、ドル化や中銀廃止というミレイ氏の主張について、ブエノスアイレス大のガブリエル・プリチェリ教授(政治学)は日本経済新聞の取材に対し、

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  • 日々流れるニュースを、様々な視点から分かりやすく解説するニュースサイト「ジャーナリスト 伊東 森の新しい社会をデザインする The Middle News Journal」のニュースレター有料版です。 いまだ私たちに伝えられてこないマスコミの情報は、残念ながら存在します。 「そもそも?」「Why?」を大事に、マスコミの情報を再編集し、様々な視点や確度から執筆していきます。 その「水先案内人」として、私の仕事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
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