【始まりの始まり】
「はー? 意味わかんねーよ、何で今辞めるんだよ、あんなに厳しい研修を耐え抜いたのはお前だけだぞ、何であの時辞めないで、店長になってこれから楽しい時に辞めるんだ? お前に期待してたのによ」
マネージャーの言うことは、もっともだった。
一緒に入ってきた社員は皆、鬼マネージャーについていけなくて辞めていたのだ。
唯一残っているのはみつおだけだったのである。
マネージャーはいつになく、優しくさとそうしていたが、みつおの決心は固かった。
何のあてもなく、実家も無く、帰る所も無いみつおだったが、とにかく沖縄に帰る事が大事だと思ったのだった。
エラを説得するのは大変だった。
山梨では自分の王国を築いていたからだ。
後輩や仲間を通じてネットワークの輪は大きくなっていた。
毎週休みの日には、エラの知人を訪ねていた。
そのネットワークを使いビジネスをしていたのである。
頭がよく、みんなからも信頼されていたのでそのネットワークでは中心人物だった。
ホステスだけでなく、溶接工や工場で働いている男性も多く、ほとんどのフィリピン人がエラを頼りにしていたのである。
「ワタシ沖縄に行ってなにするの?ここじゃないと仕事もできないよ」
「俺が何とか稼ぐから働かなくていいよ」
何の当てもなかったが、とにかく沖縄に帰ることで必死だったので口からの出まかせだった」
「あなた一人でいきなさいよ、ワタシは行かない」
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