【サンマ定食の奇跡】
「ここに行って」
エラは住所が書かれた紙を渡して言った。
「あー、分かった。バスターミナルの近くだな」
「どこでもいいから、早く行って」
エラは不機嫌だったので、黙って従うことにした。
「ここだここ、まてよパーキングは無いかな」
「パーキングじゃなくていい、あなたはここで待ってて」
「あぁ、分かった」
エラの知り合いの家に来たのだが、みつおには会わせてくれなかった。
しかたがないので、路駐をして車で待っていた。
1時間ほどして戻ってきた。
「沖縄に友達がいるの?」
「いるわけないでしょ、エリから紹介してもらったの」
エリとは、山梨のホステス仲間だった。
友達に紹介してもらって挨拶にきたのかと思ったのだが
「明日から働くから、車で連れていきなさいよ」
「えっ?昨日沖縄に来たばかりですぐに働くの?」
「はぁっ?」
それは今までに見たことのない鬼の形相だった。
「あなたが大丈夫と言ったのに、全然大丈夫じゃないでしょ、ワタシはフィリピンの家族にお金を送らないといけないのよ、どうするの?」
「…」
みつおはグーの音も出なかった。
沖縄に帰るために大口を叩いたものの、実際には稼げないどころか、家賃さえも払えていなかったのである。
エラは次の日から那覇の繁華街にあるフィリピンパブで働くことになった。
みつおの住んでいる所からは遠いため、毎日夜の7時と夜中の2時に送り迎えをすることになったのだった。
申し訳ないと思いつつも、頼るしかなかった。
しかし、みつおは沖縄に帰ってきてから、水を得た魚のように活き活きとしていた。
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