(1)お金と私
長いのか短いのか、今年で生まれてから74年を迎えます。長いよなあ。
都市の最先端だと思う東京の新宿の長屋で生まれ、ほのぼのとした思い出深い子ども時代を過ごしました。
10代の半ば、自我の目覚めとともに、自分をとりまく幸福な生活を支える社会の構造に対して、すこしずつ違和感を感じはじめて、新しく出会う他者に対しても引っ込み思案の不安定な少年になっていきました。15歳の時に、町の小さな印刷屋を経営していた父親が倒産しました。1964年、私が14歳の時に開かれた東京オリンピックは、日本の産業界に特需を生み出しましたが、それが終わると反動の不況になりました。印刷の需要か急速に減って、町の印刷屋の経営に直撃したのだと思います。印刷屋というのは社会の動きに敏感に反応する産業です。
父親は借金取りに罵倒を浴びせられました。なによりも辛かったのは、それまで無条件に私を可愛がってくれてた思った親戚の人から、父親が攻撃され、私への視線も冷たいものになったことでした。たぶん、その親戚に借金をしていたのだと思います。子ども心に、「お金って、怖くて、いやなものだ」と実感しました。
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