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中国経済、「長期停滞」局面へ 人口減・過剰負債「成長止める」

勝又壽良の経済時評
  • 2024/01/22
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中国株急落が衰退予兆へ 高速鉄道延伸は赤字要因 政府債務残高比率が急増 現実社会の「未富先老」 中国株は、1月に入っても下落の止まらない状況が続いている。香港上場の中国企業株で構成するハンセン中国企業株(H株)指数は、これまで過去最長の4年続落を記録している。24年に入って、すでに11%も下落する事態だ。中国経済が、構造的弱体化を告げているとみるべきだ。長期停滞局面入りを告げている。 中国本土と香港の株式市場は、2021年にピークを付けて以来、失った時価総額は合計で約6兆3000億ドル(約930兆円)とされる。それでも当局は、低迷する経済へ本格的なテコ入れ策を回避している。小手先の金融緩和でお茶を濁す程度で、財政支出を渋っているからだ。これは、政府債務(中央政府・地方政府・国有企業)残高の対GDP比が、23年12月末で55.3%と初めて50%台へ乗せてきたことへの警戒感が強く影響している。詳細は、後で取り上げる。 政府債務残高の対GDP比上昇は、中国共産党にとって屈辱的な事態である。これまで、中国は「社会主義現代化」を強調して、西側経済と異なり効率的であると宣伝してきた。現実は、これに反して大規模な財政赤字が存在するのだ。 中国株急落が衰退予兆へ 中国株の下落は、中国経済の構造的変化を予兆している。具体的には、1月17日に発表された二つの経済データが決め手になった。それは、23年のGDPと人口の両統計である。いずれも、中国経済の現状と将来を示す不可欠なデータだ。それが、揃って中国の将来が「灰色」であることを改めて示す結果になった。 中国政府は、23年の実質GDP成長率が5.2%と発表した。当初予想の「5%前後」を達成したと自信を見せたが、中身は全くの逆である。名目成長率が、実質成長率を下回る「名実逆転」という不況期特有の現象が起ったのだ。名目GDP成長率4.6%が、実質GDP成長率5.2%を下回ったのは、諸物価(消費者物価・生産者物価・輸出入物価)のデフレーターがマイナス=需要不足を示したからだ。問題は、これが一過性で終わるのか、あるいはこの基調が続くのかという局面である。 物価の伸びがマイナスになるのは、日本経済が経験済みのように経済活動の不活発さを示している。中国経済の不振は、不動産バブル崩壊が原因である。未だに、3000万戸とされる住宅が未竣工のままで住宅購入者の手に渡っていない厳しい現実が横たわっている。これが、どれだけ消費マインドを萎縮させているか分らない。消費者物価のマイナスには、こういう切実な事情が隠されている。 もう一つ重要な事柄は、住宅購入世代である20~29歳層が、30~39歳層に比べて極端に少ないことだ。これは、35年間にわたり続けられた「一人っ子政策」がもたらした人口構成のゆがみである。この事実を勘案すれば、もはや不動産依存の経済運営が不可能なことが分るであろう。不動産バブル崩壊の後遺症が、長引くのは既定事実としてみる段階にきたのである。

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  • 勝又壽良の経済時評
  • 経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。
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