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佐々木俊尚の未来地図レポート 2024.1.22 Vol.790
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【今週のコンテンツ】
特集
生成AIは単なる「人間のお手伝いさん」だけにはとどまらない
〜〜〜生成AIがもたらす三つの方向性を解説する(1)
未来地図キュレーション
佐々木俊尚からひとこと
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■特集
生成AIは単なる「人間のお手伝いさん」だけにはとどまらない
〜〜〜生成AIがもたらす三つの方向性を解説する(1)
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この1年にわたってテック業界を席巻している生成AIは、マイクロソフトがコーパイロット(Copilot)をリリースしたことでフェーズが一段階進んだ感があります。コーパイロットは、マイクロソフトが巨額出資しているOpenAIのチャットGPTをベースとして、生成AI機能をWindowsやWord、Excelなどのオフィスソフトに実装するというものです。
具体的には、どのようなことができるのでしょうか。これについてはテック系のメディアなどでさかんに報じられているので細かく踏み込むことはしませんが、たとえば「Wordで書いた文章を要約してもらう」「Wordのドキュメントから、画像生成AIも駆使してPowerPointのプレゼンテーションを作成」「メモした内容から、タスクリストを自動生成する」といったことができるようになります。
人間がたずさわっている日常業務の中でも、このような定型の仕事はすべて生成AIが担うようになるでしょう。たとえばわたしの仕事で言うと、雑用の中でも最も多いのが「請求書起こし」です。以前はこれが本当に面倒でした。Excelなどの請求書テンプレートを使って請求先や金額、詳細などを入力し、プリンターで印刷。印鑑を押して封筒に収め、宛先を記入し、「請求書在中」というスタンプを表面に押し、のりやテープで封をする。そして郵便ポストに投函。
これがMisoca(ミソカ)のようなクラウドのサービスが出てきたことで、だいぶ省力化されました。ブラウザ上で入力し「郵送する」ボタンをクリックするだけで、手を使う郵送作業をすべて代行してくれるようになったのです。
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https://www.yayoi-kk.co.jp/seikyusho/
とはいえ、取引先とのメールから、請求書の宛先や名目、金額、交通費がある場合にはその精算などもしてブラウザに入力しなければならない面倒さは残っています。しかし今後は、生成AIに「この取引先とのやりとりから請求書を起こして」と頼むだけで、自動的に請求書を作成してくれるぐらいは十分に可能になりそうです。雑用からほぼ解き放たれる未来がもう目の前にまで来ています。
このような「生成AIが人間の雑用をやってくれる」という方向性は、いくつかの議論を呈示しています。その中でも最も良く語られているのは、「AIが人間の仕事を奪う」でしょう。「請求書をおこす」「会議の議事録をとる」といった定型的なルーティンワークを主な業務としていたような人の仕事は、AIに奪われてしまう。「だったら人間は雑用ではなく、よりクリエイティブな仕事をするようにすればいい」という意見もありますが、この社会にはルーティンワークだけをこなしてきた人たちがたくさんいます。その人たちの全員が、クリエイティブな仕事に
切り替えられるのか?という問題。
またここから派生して、AIが仕事を奪うのではなく「AIを使いこなした人が、使いこなせない人の仕事を奪うのでは」という議論も出てきています。生産性の観点から言えば、AIを使いこなした方が生産性が間違いなく上がることを考えれば、これも大事なポイントでしょう。
しかし生成AIがこなすようになるのは、ここまで書いてきたような雑用だけではありません。コンピュータというテックのありようから考えると、生成AIはコンピュータの世界にまったく新しいUI(ユーザインタフェイス、操作系)をもたらすのだという視点も必要です。
パーソナルコンピュータの歴史を振り返ると、最初のUIは文字ベースでした。専門用語で言えば、CUI(キャラクター・ユーザインタフェイス)です。1980年代までのMS-DOSが典型ですが、真っ黒な画面(グリーンのもありましたが)に文字だけが表示され、コンピュータへの指示もすべてコマンド入力でおこなう。まだマウスは存在せず、入力装置はキーボードだけでした。
この古めかしいUIが大きく変化したのが、1980年代です。米パロアルト研究所がマウスを使って画面を操作するUIを1970年代から開発し、これを見たスティーブ・ジョブズ率いるアップルコンピュータが1983年にマウスで操作する初めてのパソコン「Lisa」を発表。値段が高すぎたこともあって商業的には失敗でしたが、Macintoshに引き継がれ、さらにマイクロソフトに真似されてWindowsも登場し、その後のUIの主流となっていきました。このマウスを使ったUIは、GUI(グラフィカルユーザインタフェイス)と呼ばれています。
2000年代後半にはスマホが登場し、UIはタッチスクリーンになりました。しかし画面上のポインタを動かし、アイコンをクリックする(タップする)というGUIの基本は変わっていません。ジョブズの発明したiPhoneのUIは、同じジョブズがつくったMacintoshの正統な後継者だったと言えます。
ここまでを振り返ると、パーソナルコンピュータのUIは1980年代までのCUIと、それ以降のGUIという大きく言えば二つの世代しかまだ存在していないということです。
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