台湾の総統選挙で日本のメディアが盛り上がった裏で、香港では2019年の反香港政府・反中国デモに絡む重要な裁判が始った。北京がその首魁と目す『りんご日報』の創業者・黎智英(ジミー・ライ)氏の公判で2日が冒頭陳述だった。
日本では検察側の主張の詳細が伝えられることはない。もっぱら言論の自由を守る橋頭保としての『りんご日報』VS香港司法に終始し、裁判がいかに茶番であるかを伝えている。香港当局も、まるでメディアに材料を提供するように「民間人の陪審員を排除」し、「英国人弁護士の出廷を拒否」した。
だが、対立軸で香港デモを語ることには限界がある。
私は中国報道にかかわって40年、ほぼすべてのデモを現地で取材してきた。なかでも1986年12月、新中国の歴史で初めて学生が「民主」を求めて行動を起こしたデモでは、自身が学生だったこともあり一緒に声を上げた。このときの運動が後に天安門事件へと繋がっていったのだが、こうしたデモの現場に深く入れば入るほど、見たくないモノもたくさん見て、知りたくないコトにも多く遭遇した。報道機関が描くナラティブに収まるようなデモには遭遇したことはない。
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