【初舞台】
「えっ?今日?」
「今日」
「今?」
「今」
「無理だよそんなの、俺人前で話したことないよ」
「だからいいんだよ」
「っていうか、何を話すの?」
「お前が経験したことだよ」
「えっ?俺は何を経験したの?」
「みつお、今日のテーマは「怒りの感情」だわけさ、お前はずっと怒りと向き合ってきただろ、俺とのやり取りを体験談として話せばいいんだよ」
そこはセミナー会場だった。
なんとみつおの同級生で理容室を営んでいたやつがセミナーを開催しているのを聞いてみつおも参加するために会場きたのだが、その友達と喫煙所でタバコを吸っているときに、突然そう言われたのだった。
会場には200名ほどの参加者がいた。
実は畑に集っている若者はみつおの友達のユキオを応援して、毎月セミナーを主催していたのである。
日頃はたんぽぽおじんの畑を手伝いながら、畑の小屋でセミナーの打ち合わせなどをしていたのである。
そのユキオと同級生ということで、みつおは一目置かれていて、昔のユキオとのやり取りを話すと喜んでくれるので、みつおも嬉しくて、仕事がない時は畑に足を運んでいたのだった。
しかし、まさかセミナーで話すハメになるとは思っていなかった。
かなり緊張しながら、
「それではユキオ先生の同級生である金城みつおさんに先生との対話で気づいた体験談をお話ししてもらいます。みつおさん、よろしくお願いします」
みつおはガクガク震えながら舞台に立った。
「えっと、あの、ただいまご紹介に、えっ?紹介に…、紹介してもらいました金城みつおです」
しょっぱなから、言葉が出てこなくて焦ってしまった。
しかし、その様子を見た会場の人々に笑いが起こった。
その笑いを聞いて気分良くなったみつおは、急にロレツが回るようになったのだった。
「みなさん、笑ってくれてありがとございます。これで話をすることができます。
さて、今日は何の話でしたっけ?」
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