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第248号 SLIMな月面着陸物語/UFOが飛べば戦争が起こる/霜焼/恐怖の円盤落下事件?

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  • 2024/01/24
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「SLIMな月面着陸物語」 2023年9月7日、鹿児島県の種子島宇宙センターからH-2Aロケット47号機で打ち上げられた小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」は、約1カ月後の10月4日に地球を公転する月の重力を利用して軌道を変更する「月スイングバイ」に成功しました。そして、打ち上げから約3カ月半後の同年12月25日、予定通りに月の周回軌道に入り、約3週間の周回を終えた2024年1月15日、月面への着陸準備に入りました。 そして、1月19日午後10時40分頃から月の上空15キロまで高度を下げ、20日午前0時頃に降下を始め、1月20日午前0時20分頃、ついに月面にソフトランディングを果たしたのです!これは、1966年の旧ソビエトとアメリカ、2013年の中国、2023年のインドに次ぐ、世界5カ国目の月面着陸です!バンザーイ!バンザーイ!バンザーイ! この成功を受けて、NASAのビル・ネルソン長官は、さっそく「おめでとう。日本は月面着陸に成功した5番目の国になりましたね。これからも宇宙における友好関係を続けて行きましょう」と祝福のツイートを投稿してくれました。 Bill Nelson @SenBillNelson Congratulations @JAXA_en on being the historic 5th country to land successfully on the Moon! We value our partnership in the cosmos and continued collaboration with @NASAArtemis. 午前7:27 2024年1月20日 https://twitter.com/SenBillNelson/status/1748472194273849399 今回は、着陸後に太陽電池が発電しないというトラブルが発生し、JAXA宇宙科学研究所の国中均所長は「ぎりぎり合格の60点」という辛い評価をしました。でも、あたしから見たら、機体を破損させずにソフトランディングさせただけでも「大成功」です。どうしてかと言うと、有人無人に係わらず、月に行くだけでも難易度の高いミッションであり、それが月面着陸ともなれば、極めて成功率が低いからです。 たとえば、JAXAが2022年に月へ送ったキューブ型衛星「OMOTENASHI(おもてなし)」は、打ち上げ直後に通信が途絶え、そのまま回復せず、失敗に終わりました。また、2023年に月面着陸を目指した民間企業「iSpace」の「HAKUTO(白兎)R Mission 1」は、何とか月までは辿り着きましたが、月面着陸のミッションで失敗しました。 つい最近も、今年1月8日に打ち上げられたアメリカの民間企業「アストロボティック・テクノロジー」の月着陸機「ペレグリン」が、バルブが作動せずに燃料漏れを起こしたため、計画を断念し、大気圏に落下させて燃え尽きさせました。それにしても、この企業は日本を舐めているのでしょうか?だって「ペレグリン」て「はやぶさ」のことなんですよ。「はやぶさ」と言えばJAXAの看板なのに、パクらないでほしいです。 ま、それはそれとして、これほど立て続けに失敗している月ミッションなので、多少のトラブルなど発生しても、まずは計画通りに着陸できただけでも大成功なのです。そして、今回の目的の1つだった「ピンポイント着陸」については、今後、通信データを解析して成功したかどうかが分かるそうです。 今回の着陸予定地は、月の東側の赤道近くの「神酒(みき)の海」の「SHIOLI(栞)」と名づけられた直径約300メートルのクレーターの近くの傾斜地でした。ここに「誤差100メートル以内」というピンポイントで着陸させるのが目的でした。 今のとこ月は誰のものでもないので、月の埋蔵資源を狙った国際競争が水面下で続いています。月面を長距離移動するのは難しいので、月での資源を自分のものにするには、埋蔵場所にピンポイントで着陸する技術が不可欠であり、今回のミッションはその第一歩だったのです。でも、各国が金儲けのために月面を奪い合い、そこら中に穴を掘るなんて、想像しただけでドンヨリした気分になって来ます。 ‥‥そんなわけで、気分を変えてSLIMの話に戻りますが、今回の「地球から月まで約3カ月半」という行程を聞いて「あれ?」と思った人もいるでしょう。何故なら、1969年7月20日にアポロ11号が人類初の有人月面着陸を成し遂げた時は、地球から月まで73時間、約3日間だったからです。それなのに、今回は約3カ月半も掛かっているのです。もしかしてSLIMってば、どこかで道草を食ってたの?‥‥ってなわけで、地球から月までの距離は約38万4400キロです。 あたしが一睡もせずに車を運転して、時速100キロで延々と走り続けたら、3844時間で月に到着します。1日は24時間なので、3844時間は約160日、約5.3カ月です。倍の時速200キロで走り続ければ、約2.7カ月、SLIMを追い抜いて、あたしのほうが先に月に到着しちゃいます(笑) どうしてSLIMがこんなに時間を掛けて飛んだのかと言うと、それは燃料の消費をできるだけ抑えるためです。人間が搭乗しているアポロの場合は、宇宙の放射線から乗組員を守るために、できるだけ飛行時間や月面での滞在時間を短縮しなければなりません。そのため、全速力で飛んだのです。しかし、無人機の場合は、その心配がないため、最優先されるのは途中で補給できない燃料なのです。 ちなみに、今回の無人機の名前は「SLIM」ですが、高さが約2.4メートル、奥行きが約1.7メートル、幅が約2.7メートル、重さが約200キロで、ちっともスリムじゃありません。ま、そもそもの話として、この「SLIM」は「細い」という意味じゃなくて、「Smart Lander for Investigating Moon」のイニシャルなのです。この「S」を表わす「Smart」も、「スマートフォン」と同じ「賢い」という意味なので、直訳すると「月を調査するための賢い着陸機」という意味になります。 でも、このSLIM、もの凄い大食らいなのです。機体の重さは200キロなのに、燃料が500キロも入るので、満タンにすると700キロになっちゃうのです。これは、体重45キロのギャル曽根ちゃんが、ラーメンを100キロ以上食べるような話です。SLIMが700キロになっても、月の重力は地球の6分の1なので、月まで行けば100キロちょいになります。それでも、100キロもある機体がそのまま落ちて行き、月面に激突したら、バラバラになってしまいます。 そこで、SLIMは着陸時に何度も逆噴射して降下速度を抑制するのですが、今回は「ピンポイント着陸」のために方向や角度などの調整も必要であり、この逆噴射に大量の燃料が必要なのです。それも、SLIMは上空からまっすぐ下降して着陸するのではなく、着陸地点から800キロも離れた場所から、飛行機のように横へ飛びながら下降して行き、目的地点を目指したのです。 あたしはYOU TUBEで配信されたJAXAの生中継をずっと観ていましたが、横向きに飛びながら下降するSLIMが、途中で何度も「ブースト!」と言って逆噴射して、目標へ徐々に近づいて行くモデル画面をハラハラしながら見守っていました。何しろ、これは「はやぶさ」や「はやぶさ2」の各ミッションと同じく、人間が地球から遠隔操作などできないため、事前のプログラムによってSLIM自身が判断して飛んでいるからです。 800キロも離れた場所からの誤差100メートル以内の「ピンポイント着陸」とは、JAXAの坂井真一郎プロジェクトマネジャーによると「北海道の上空を通常の8倍の速度で飛行している航空機を、20分後に甲子園球場のマウンドに着陸させるようなもの」とのこと。人間が操作しても難しいのに、SLIMはこれを自分でやるのです。今回は「画像照合航法」と言って、搭載されたカメラで月面を撮影して、点在するクレーターを確認しながら進み、事前にプログラムしてある目標のクレーター「SHIOLI」と照合する場所を自分で見つけ出すのです。 さらには、何とか目標を見つけ、そこまで飛んで行くことができたとしても、次は「2段階着陸」という、これまた難易度の高いミッションが待っているのです。そのままドスンと着陸すると衝撃が大きく、精密機器などに悪影響が出る恐れがあるため、まずは後部の脚を月面に接触させ、機体が前方に傾いてから前部の脚が着地するという方法で、着陸時の衝撃を緩和させるのです。そのため、着陸地点に傾斜地を選んだのです。

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