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中国EVのBYD「実力」、トヨタ全固体電池EVへ対抗できるか「総合力で脆弱」

勝又壽良の経済時評
  • 2024/01/25
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トヨタ時価でアジア3位 BYDはナトリウム電池 債務処理後回しの危険性 EV関連で危機打開狙う 世界の自動車産業は、大転換期を迎えている。100年以上の歴史を持つ内燃機関から、バッテリーが動力源のEV(電気自動車)シフトに直面しているからだ。一般的には、このシフトは簡単と楽観的であった。現実は、リチウムイオン電池が持つ限界点によって、EVブームは頓挫しかけている。脱炭素効果が予想よりも少ないことや、リチウムイオン電池固有の欠陥表面化の結果である。 もともと、耐久財新製品の販売では一本調子の普及などあり得ない。最初は、好奇心の強い消費者の購入で急伸する。だが、普及率16%までの「初期市場」から、次の本格的な息の長い「主流期」へ入る間に「深い溝」(キャズム)が存在する。これは、マーケッティングで「キャズム理論」と呼ぶ現象だ。現在、欧米でEV普及で大きな壁ができているのは、販売上の「深い溝」がもたらしたものである。 EVが、この「深い溝」を超えるにはEV自体の品質改善を必要とする。消費者が、これによって内燃機関以上の利便性を認めたとき、EVは「永遠の商品」として発展可能となろう。現在のEVは、未だその資格を得ていないのだ。 EVが永遠の商品になる条件は、現在のリチウムイオン電池から全固体電池へ技術革新が進むことである。全固体電池によって、発火しにくい・走行距離が長くなる・充電時間が短くなると期待されている。その先頭に立つのがトヨタ自動車である。一方、現在のEVでは世界トップが中国のBYD(比亜迪)である。昨年10~12月期に、米国テスラを販売台数で抜いたと報じられている。BYDは、今後の全固体電池時代にトヨタと対抗する技術を持つのか。改めて、その力量をみる必要が出てきた。 トヨタ時価でアジア3位 トヨタの時価総額は、1月22日に3280億ドル(約48兆5800億円)を超えてアジア市場で3位に踊り出た。中国のテンセントの3220億ドルを上回ったのだ。アジア市場で1位は、半導体のTSMC(台湾積体電路製造)。2位は、韓国のサムスン電子である。いずれも半導体企業である。トヨタが、こうした半導体企業に次いで「技術革新」企業として評価されたことは、全固体電池への高い評価を表している。 BYDの株価は不振を極めている。BYDは、23年に約160万台のEVを販売した。輸出台数も昨年は4倍以上に伸ばし記録を更新したほどである。だが、深セン株式市場に上場している株価は、22年の最高値から45%も下落している。予想PER(株価収益率)は今や15倍前後と、170倍を超えていた21年から大幅な低下だ。この10年来で最も低い水準へ落ち込んでいる。20年には、海外からの投資が殺到して、BYDの予想PERは、テスラと同水準にまで上昇した。現在は、当時の面影すらない状況である。 トヨタとBYDの株価比較をすれば、すでに勝敗が明らかになっている。トヨタは、すでに次世代自動車のエネルギー源開発で全方位の研究を続けている。これが、市場で明暗を分けた理由であろう。

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  • 勝又壽良の経済時評
  • 経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。
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