金正恩総書記の「２つの国家」及び「南北統一放棄」宣言で消滅する組織と慣用語　軍事境界線は国境？

＼＼＼　━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━　／／／ 　　　　　　　　　　辺　真一メールマガジン 　　　　　　　マ┃　ル┃　秘┃　レ┃　ポ┃　―┃　ト┃　 　　　　　　　━┛　━┛　━┛　━┛　━┛　━┛　━┛　 　　　　　　　　　　　 2024.01.25　Vol.358 　　　　　　　　 ［毎月5,15,25日発行＋号外あり］ ／／／　━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━　＼＼＼ 1　金正恩（キム・ジョンウン）総書記は昨年末の労働党中央委第８期第９回全員会議（総会）での報告で「南北関係は敵対的な二国間関係で、韓国は敵国、交戦国である」と断じ、対南政策及び路線の転換を「憲法に明記すべでき」と提案し、続いて今年１月１５日に開催された最高人民会議（第１４期第１０回会議）での施政演説では「大韓民国は不変の主敵である」と強調し、南北関係を完全に遮断・断絶する政策を打ち出した。 　金総書記はまた、「共和国の民族歴史から『統一』、『和解』、『同族』という概念自体を完全に削除しなければならない」と述べ、これからは「三千里錦繍江山」とか「８千万民族」のような南北一体を表すような言葉を使わないだけでなく、憲法にある「北半部」や「自主、平和、民族大団結」のような表現を「削除すべきである」と強調していた。おそらく、３８度線上の軍事境界線をこれから国境に定めることになるのであろう。 　金総書記は次回の最高人民会議での憲法修正を求めていたが、今年３月には５年に一度の代議員選挙がある。代議員が改選されれば、４月に最高人民会議が召集される。従って、金総書記の指示は４月には具現化されることになるが、憲法に定める前にすでにそうした措置が取られているようだ。以上、占ってみた。 　１．対南機構及び団体廃止 　▲労働党の対南担当書記のポストを廃止 　北朝鮮はすでに２０２１年６月の第８回党大会ですでに対南担当書記を廃止していた。最後の対南担当書記は統一戦線部長だった李善権（リ・ソングォン）氏であった。 　▲統一戦線部（統戦部）解体 　「統戦部」は対南戦略・戦術業務を総括し、対南外郭団体業務を調整、統制する労働党中央委員会傘下の専門部署である。南北会談、経済協力、民間交流、対南資料収集及び分析など対南事業全般を総括する核心部署である。 　▲祖国平和統一委員会（祖平統）解散 　「祖平統」は党中央委員会統一戦線部の外郭機関として１９６１年５月１３日に発足し、２０１６年最高人民会議第１３期第４回会議で「統戦部」傘下の党外郭機構から内閣所属機構に変更された。南北の懸案に関する北朝鮮の公式見解を表明し、会談、交流、共同行事など対南事務事業を総括・執行する機関として知られ、韓国と国外同胞に対して南北・統一問題に関する宣伝活動を行ってきた。金与正（キム・ヨジョン）党副部長が２０２１年３月に談話で「現情勢でもはや存在する理由がなくなった対南対話機関である祖平統を整理する問題を日程にあげざるを 得なくなった」と述べるなど、消滅を示唆していた。 　▲祖国統一民主主義戦線消滅 　１９４９年６月に平壌で韓国の民主主義民族戦線と北朝鮮の民主主義民族統一戦線が統合して設立された組織。労働党など政党、社会団体、宗教団体の連合体で構成された党外郭機構で、その目的は党の政策、特に南北統一問題に対する政策を支持、擁護、貫徹することにある。韓国で発生する重要事件や南北関係に関するイッシュについて声明及び談話を出すなど北朝鮮の立場を代弁する役割を担ってきた。 　▲朝鮮アジア太平洋平和委員会（亜太平委）解散 　「亜太平委」は１９９４年５月に設立された「統戦部」の外郭組織である。米国や日本などアジア地域の未修交の孫口の役割を担ってきた。２０００年の史上初の南北首脳会談を機に金剛山観光など南北の交流や協力事業のパートナーとして浮上した。