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週刊Life is beautiful 2024年1月30日号: 生成型AIと著作権

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 生成型AIと著作権 少し前から、生成型AIと著作権の問題については触れて来ましたが、今回、Animagine XLというオープンソースの text-to-image モデルを私の MacBook で動かすことにより、色々と明らかになったことがあるので、それについて説明します。 Animation XLは、同じくオープソースである、Stable Diffusion XL 1.0から派生したもので、アニメ画像を生成することを優先し、数多くのアニメ画像を学習することにより作られたモデルです。 ローカルマシンでの走らせ方は、【Animagine XL 3.0】誰でも簡単にアニメ美少女の画像を生成できる神AI!使い方や料金、使ってみた感想を紹介という記事があるので、これを参考にしてください(若干のプログラミングの知識が必要です)。 ただし、記事は NVIDIA のGPUを搭載したパソコンで走らせることを前提にして書かれているので、M1/M2/M3を搭載したMacで動かす場合には、14行目のpipe.to('cuda') をpipe.to('mps') に変更してください。 プロンプトには、Danbooruと呼ばれる、アニメファンの間で幅広く使われているタグを使う必要があるので注意してください(例:face focus, cute, masterpiece, best quality, 1girl, green hair, sweater, looking at viewer, upper body, beanie, outdoors, night, turtleneck)。普通のプロンプト(Stable Diffusion向けのプロンプト)を使うと、アニメではなく、写真のような画像が生成されてしまいます。 これは、ネット上に存在するアニメ画像には、既にDanbooruタグがついており、それを使って学習しているためです。 例えば、プロンプトを"face focus, cute, masterpiece, best quality, 1girl, green hair, sweater, looking at viewer, upper body, beanie, outdoors, night, turtleneck"に設定すると、以下のような画像が生成されます。 当然と言えば当然ですが、このモデルが学習したデータのほとんどは、著作権が付いたものです。New York Timesが(OpenAI/Microsoftを相手にした訴訟で)主張するように、著作権付きのデータを学習することが著作権法に違反しているのであれば、それだけでアウトです。 このモデルを作ったのはCagliostro Research Labと呼ばれる団体(もしくは個人)ですが、自ら "Virtual research lab" と宣言する通り、会社組織ではないようです。 さらに、Animagine XLのアナウンスメントの記事「Announcing Animagine XL 3.0」を読むと、プロンプトガイドとして、「キャラクターの名前」「(アニメ)シリーズの名前」を指定すると良いと書かれており、使う人が、(著作権付きの)アニメのキャラクター画像を生成することを前提に作られていることが分かります。 ここまで読んだだけで、著作権法的にはかなり灰色であることが分かると思います。 New York Timesは、OpenAIが、New York Timesの(著作権付きの)記事を許可なく学習データとして使ったこと、そしてその結果、記事の内容だけでなく、記事の文章そのものまでを覚えてしまっていることを批判していますが、OpenAIは、一般知識としてNew York Timesの記事を学習データとして使っただけで、利用者がNew York Timesの過去の記事を無料で読むためのツールとしてChatGPTを作ったわけではありません。 Animagine XLは、著作権付きのデータ(アニメ画像)を許可なく学習データとして使っただけでなく、そのユーザーが、プロンプトでアニメのキャラクターを指定して、画像を生成することを前提として作られており、著作権法的には、かなり黒に近い灰色です。 試しに、ドラゴンボールの孫悟空と、魔女の宅急便のキキを生成してみたところ、高い再現性で生成できてしまうことが分かりました。 こんな画像を生成し、さらにネットで共有することは、明らかに著作権法違反ですが、難しいのは、著作権法を犯しているのは、(Animagine XLを提供している)Cagliostro Research Labなのか、画像を生成・共有しているユーザーなのか、という判断です。 包丁を使った殺人が行われた場合、殺人罪に問われるのは、包丁を作った人ではなく、包丁で刺した人、という観点から言えば、このケースでも、著作権法に抵触する画像を生成してシェアした人が犯罪を犯したことになる、という見方も可能です。 ちなみに、著作権は、特定のキャラクター(この場合だと、孫悟空やキキ)に適用するものであり、絵のスタイル(画風)には適用されないことを考えれば、Animagine XLを使って、特定のアニメの画風を使って別の画像を作るのであれば、問題ない、という考え方もあります。 下の画像は、パリのエッフェル塔を、新海誠監督の「君の名は」の画風で描かせたものですが、これは画風だけを真似したオリジナル作品であることから、著作権法的には問題ないことになります。

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