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【死んでも書きたい話】 旅券発給拒否の取り消し命令が出ました

安田純平の死んでも書きたい話
みなさん、いかがおすごしでしょうか。おかげさまで、2024年1月25日にあった旅券裁判の地裁判決で発給拒否取り消し命令を勝ち取りました。応援いただきありがとうございます。国側は控訴するでしょうから、まだまだ続きます。これからも、よろしくお願いいたします。 2018年10月にシリアから帰国し、年明けてから気分一新に家族と海外旅行でもしようかと思った矢先の2019年1月、新たな旅券の発給を申請したところ「帰国の際にトルコから入国禁止措置を受けた」と言われました。拘束から解放されたと思ったのに、日本政府によってまだまだそれが続くことになる、という暗澹たる気分に沈んでいたのが5年前の今ごろでした。 結局、2019年7月になって発給拒否通知を渡され、今でも旅券を所持できていません。拒否の根拠は「トルコが5年間の入国禁止措置をとったから」で、普通に考えて5年間は旅券が発給されないということでした。シリアで拘束されたことがきっかけなので、事実上、拘束されたことに対する“処罰”です。 処罰というのは一瞬で終わるものではなく、いつまでもそのことを思い出して行動を改めよ、ということです。解放されて帰国してからも、少なくとも5年間はシリアで拘束され人質にされたことを思い出し続け、悔やみ続けろと。旅券発給拒否などなくても、3年4カ月という年月の間に多くのものを失いました。そのことを忘れることはありません。それに加えて、旅券発給拒否によって未来まで奪われたということです。 2018年10月24日にとられたというトルコによる5年間の入国禁止措置はすでに切れています。普通に考えれば発給申請すれば発給されるはずです。しかし、入国禁止措置自体が日本政府からの要請によるものという疑いが濃く、再び入国禁止措置が取られる可能性もかなりあると思っています。 発給拒否の根拠となる法律は旅券法13条1項1号「渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者」で、該当すると「一般旅券の発給又は渡航先の追加をしないことができる」というものです。これを国は、「渡航先」とは一般旅券があれば渡航できる全世界を指し、その中の一国にすぎないトルコから入国禁止を受ければ全世界への渡航を禁じることができる、という解釈をして旅券発給拒否しました。この解釈が許されている限り、日本から一歩も出てはいけない罰が続く恐れがあります。 旅券発給拒否の取り消しと旅券発給を求める訴訟は2020年1月に起こしました。4年がかかって昨年10月5日に結審し、その月にトルコによる入国禁止措置の5年が終わりました。1月25日の判決言い渡しは、“日本から一歩も出てはいけない罰”がこの先も続くのか終わるのか、が分かれる瞬間でもある、と私は思っていました。

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  • ジャーナリスト安田純平が現場で見たり聞いたりした話を書いていきます。まずは、シリアで人質にされていた3年4カ月間やその後のことを、獄中でしたためた日記などをもとに綴っていきます。
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