メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

第431号:林田直樹の「よく聴く、よく観る、よく読む」

林田直樹の「よく聴く、よく観る、よく読む」
  • 2024/01/30
    • シェアする
林田直樹の「よく聴く、よく観る、よく読む」2024年1月30日 Vol.431より 林田直樹です。お待たせしました。 今年最初のメルマガになります。 元日の能登の震災以来、大きな事故や事件が相次ぎ、おめでたい気分も吹き飛んでしまう波乱の1か月でした。個人的にも、全く新しい仕事が幾つか始まるなど、「次のフェーズ」に入ったという感じがしています。 【音楽のことば】 「安らかに寝ることを欲するか。 私は内的な戦いを愛する。 何ゆえなら、もし疑うことがなかったら、 確実なことを知る喜びがどこにあろう。」 (ゲーテ) ※出典:「ゲーテ詩集」(ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ著、高橋健二訳 新潮文庫)229ページ https://amzn.to/42h6CPr 質量ともに膨大なゲーテの詩を身近なものとするためには、抜粋が必要である。 訳者が編集・配列することによって、こんなにも味わいやすくなった。「すみれ」「魔王」など、モーツァルトやシューベルトの歌曲の原詩もたくさん含まれており、音楽が生まれる前の詩の調子を味わえるのも楽しい。 【このディスクが面白い】 ●「シベリウス:交響曲第4番、他」 サントゥ=マティアス・ロウヴァリ指揮 エーテボリ交響楽団 ナクソス・ジャパン NYCX-10448 https://item.rakuten.co.jp/naxos/nycx-10448/ シベリウスの4番は、最も暗く謎めいた、曖昧模糊とした音楽である。 このような捉え難い美を説得力あるものとするために、何よりも大切なのが「確信」だ。 ロウヴァリは1985年フィンランド生まれの若手指揮者。スウェーデンの名門オーケストラを率いて、力強く彫りの深い音楽作りを実現している。冒頭、ごうごうと鳴る低弦の迫力からして、その思い切った表現にゾクッとさせられた。抽象的な音楽の骨格をこれほど明確に、太い筆跡で勢いよく描くことで、伝わる力が違ってくる。 カップリングされている、管弦楽のためのバラード「森の精」は珍しい曲だがとてもいい。若きシベリウスの覇気と自然への敬愛が良く出ている。最後の「悲しきワルツ」ではロウヴァリの解釈のユニークさが際立っている。単なる美しいワルツではなく、無言のうちに語られる悲劇的なドラマを感じさせる。不気味な終わり方もいい。

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • 林田直樹の「よく聴く、よく観る、よく読む」
  • 音楽ジャーナリスト・評論家の林田直樹が、クラシック音楽の公演や新譜の中から選り抜きの重要な情報をお伝えします。35年以上の取材経験を踏まえつつ、現場での最新エピソード、美術や文学などクロスジャンル的な題材も盛り込んだ「音楽随想」は、最も力を入れている人気の読み物です。 創刊して12年以上がたちますが、根強い購読者の皆さんに支えていただいています。インターネットラジオOTTAVAの熱心なリスナーも多く加入しており、番組関連の情報をここで最初に発信することも。購読者の特典として、個別のメールのやり取りが可能。「不定期刊行」ですが、基本的にはほぼ月末に2本を配信しています。
  • 550円 / 月(税込)
  • 不定期(主に月末2本)