━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
§ 中 国 万 華 鏡 § 之 ぶんぶくちゃいな § vol.488 § 2024年2月3日発行 §
今週のトピック:共産中国と自由世界を漂う「愛国者」たち
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【2019年に香港で起きた激しいデモ。半年にわたり、次第に過激になっていくデモを、
香港市民たちはいかに支えたのか。参加者の証言と学者の分析でまとめた『時代の行
動者たち 香港デモ2019』(白水社)
https://amzn.to/3HM7QbU 、好評発売中です。】
昨年夏に、就任してわずか半年の秦剛が外相を罷免されてから、中国のいわゆる「戦狼外交」スタイルがなりを潜めたなぁ、と感じていたところに、また騒ぎが起きた。
今度は「狼」ではなく「馬」、それも行動を起こした当人が「戦馬行動」と名付けて中国国内のSNSにその様子をアップしており、物議を醸していた。
南京に住む、その「陳」と名乗る男性は、南京のショッピングアーケードが近づく春節気分を盛り上げようとショーウィンドウの赤いバブルを模した飾り付けを指差して、「ここは南京だ、東京じゃない。日本の文化侵略を許すな」と叫び、そのバブルのステッカーを剥がそうとしたという。彼の目にはそれが「日の丸」のようだと映ったらしい。実際には日本とはなんの関係もない装飾だったが、その様子をとらえた動画がネットにアップロードされたことで、アーケード側は「確かに不適切だった」と謝罪したという。
(写真:南京バブル)
これに多くの中国人たちが唖然となり、騒ぎが大きくなった。すると、1月初めにも広西壮族自治区南寧市の地下鉄駅で新年を前に準備された装飾が、やはりネットユーザーのクレームを受けて撤去されたことが明らかになる。この装飾は壁一面が赤をベースにした色で、そこに大きな扇が描かれ、中国の干支や獅子舞の様子、梅の花や「歩歩高昇」(「ますます高く」の意味で、成長を期待するお祝いの言葉)の言葉などが散らばる、中国らしい図柄だった。
(写真:南寧地下鉄扇)
だが、ネットユーザーはその巨大な扇が「旭日旗のようで不愉快」と批判したらしい。どう見ても中国チックな図柄だが、ネット上の炎上を恐れた地下鉄側が折れた。さらには、中国を走る高速鉄道の飲水器のボタンが「丸い赤」なのを「文化侵略」と指摘する投稿もあったらしい。
「じゃあ、今後中国では赤くて丸いものや放射状の図柄は使えないのか? 我われは赤い四角のものしか受入れられないってことか?」
これらの「戦馬行動」を伝える記事についていたコメントである。中国人の「赤」好きは我われ日本人の想像を超えている。厄年には男性でも邪気を払うとされる赤い色の下着を身につけるという風習がいまだに続いており、正月前には下着売り場には赤い下着がかなり目を引くところで売られている。つまり、中から外まで赤が大好きなあの国の人たちにとって、「赤丸」や「赤い放射線」がタブーになれば、どれほど不自由なことになるだろう。
ただ、救いなのは、現時点においては、この「戦馬行動」ムードを、中国政府系メディアがやんわりと批判していることだ。たとえば、嫌外的な論調で知られる「環球時報」の編集長を長年勤めてきた胡錫進氏は、自身のオンラインコラムで「普通のビジネス行為に圧力をかけ、対立感情を煽ることは、愛国ではない。極端な手段でネット上のアクセス増加を狙うのは邪悪な方法だ。そんな罠に陥ってはいけない」とわざわざ述べている。
その他のメディアも「そうやって自国内で自国のビジネスの首を締め付けるのは間違っている」と、「内捲」を非難している。
「ネットのアクセス」……今や、SNS上の注目度をお金に変えたり、権利主張の動力にしたり、あるいはそのまま権力として振り回すことができる時代。それは中国だけではないものの、現実生活よりも簡単に手に入るそんな「パワー」に夢中になり、「ネット暴君」あるいは「ネットごろつき」へと転落する人も少なくない時代なのだ。
●「公開してはならない」?
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)