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【Vol.520】冷泉彰彦のプリンストン通信『日米の政局、混沌の裏』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「能登復興へ、資材不足と人材枯渇への危機感」  能登半島の復興には相当な時間がかかることが見えてきました。2つ大きな問題があります。道路と水道です。まず水道については、部分的には復旧しましたが、まだ時間がかかりそうです。問題は道路で、半島の主要幹線道について、復旧には年単位の時間がかかるという説明がされています。  巨大な半島という地形、厳寒期の過酷な気象といった能登半島の特性から来る問題と思っていたのですが、どうもそうでもないようです。まず、道路に関しては、大規模な陥没や段差を修理するのには、大量の砕石を用意しなければならないのですが、そのメドが立っていないようなのです。また、アスファルトの供給も見通しが立っていませんが、これはそもそも能登がアスファルトの供給地であり、工場の多くが被災しているからだと言います。  ということは、仮に、全国のどこかで能登半島地震規模の災害が発生した場合には、例えば道路に被害が出た場合の復旧ということでは、同じような困難を抱えるということです。と言いますか、能登を優先するとなると、そのもう一つの被災地の道路復旧は3年を要するというような可能性も十分にあります。  これは国家的な危機です。国交省はこうした問題に見通しを持っていると思います。ですから、しっかりと現状を説明して、例えばですが予算を増額しても道路復旧を加速できないのか、あるいは素人的な議論で出ている万博を延期したら、資材を能登に回せて道路が早く復旧するというような意見が「正しい」のかどうか、明らかにしていただきたいです。その上で、カネで対応できるのであれば、予算を用意すべきです。  繰り返しになりますが、過疎地を維持するための道路ではありません。日本の重要な国土である能登半島が「壊死」しないための、そして被災地に重機を入れて最低限の復興をするためにも、どうしても必要な幹線道路の復旧のメドが立たないという厳しい問題なのです。  これとは別に水道の問題がありますが、これは全国から支援が入る中でも、やはり人材難の問題があります。水道のプロが決定的に少ないのです。この問題で言えば、もう一つの別の震災が起きたらという恐怖のシナリオ以前に、老朽化した全国の水道ネットワークを維持するためだけでも、人材不足があるという問題を突きつけていると思います。これも国家の設計に関わる大問題です。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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