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第333号. 令和6年度の年金額は2.7%上昇となり、基礎年金は過去最高水準とその反映の仕方と経済への影響。

事例と仕組みから学ぶ公的年金講座
こんばんは! 年金アドバイザーのhirokiです。 ーーーー 1.令和6年度の年金額は2.7%上昇。 ーーーー 令和6年度の物価変動率が3.2%、賃金変動率が3.1%引き上がる事になりました。 それに対して高齢化による年金の負担増加や、少子化による現役世代の減少を数値化したマクロ経済スライド0.4%という事なので、年金額は賃金変動率3.1%からマクロ0.4%引いた2.7%増加となります。 老齢基礎年金満額でいえば、今は795,000円(68歳以上の人は792,600円)となっておりますが、令和6年度は816,000円(月額68000円)。 68歳以上の人は813,700円(月額67,808円)となります。 どういう計算なのかというと、老齢基礎年金の場合は平成16年の額である780,900円を基準とします。 令和5年度はこの時は物価が2.5%上昇で、賃金が2.8%上昇、マクロが0.6%だったので物価変動率は1.9%(1.019)上昇とし、賃金変動率は2.2%(1.022)上昇となりました。 平成16年度基準額780,900円×改定率(令和4年度改定率0.996×令和5年度賃金変動率1.022=令和5年度改定率1.018)=794,956円≒795,000円(100円未満四捨五入)となっていました。 なお、68歳以上の人は物価変動率を原則使う事が平成12年改正の時に決まっていて、780,900円×(令和4年度改定率0.996×物価変動率1.019=令和5年度改定率1.015)=792,613円≒792,600円となっていました。 改定率というのは計算過程のように物価や賃金変動率(名目手取り賃金変動率)を加味した部分です。 で、令和6年度は新しい物価や賃金が発表されたので、それを用いて新しい年金額を算出します。 ・令和6年度老齢基礎年金満額(67歳までの人)→平成16年度基礎年金基準額780,900円×(令和5年度改定率1.018×名目手取り賃金変動率1.027=令和6年度改定率1.045)=816,040円≒816,000円(基礎年金満額は100未満四捨五入) なお、68歳以上の人は本当は物価変動率を使いますが、賃金上昇より物価上昇の方が大きい時は賃金変動率を使います。 物価を使うのは主に年金受給者の人ですが、その年金というのは現役世代の賃金から一定率を控除した保険料から支払いますよね。 支え手である現役世代の賃金上昇の力を超えてしまうと、年金財政としては支えての力を超えた給付をする事になります。 例えば60キロの人が30キロの人をおんぶしていて、おんぶしてる人の筋力が2キロアップしてもおんぶされてる人が35キロになったら苦しくなります。 よって、令和6年度は賃金の上昇より大きい物価ではなく、物価より小さい賃金を使います。 68歳以上の人は780,900円×(令和5年度改定率1.015×賃金変動率1.027=改定率1.042)=813,697円≒813,700円となります。 ーーーー 2.基礎年金額は過去最高水準。 ーーーー さて、僕がその金額を見て思ったのは、これは老齢基礎年金の満額では過去最高水準だった事です。 今まで過去の老齢基礎年金の最高額は平成11年度から平成14年度までの804,200円が最高だったから、それを超えたなあとちょっとビックリでした。 余談ですが、この平成12年度、平成13年度、平成14年度は本当はこの3年間で物価が1.7%落ち込んだのですが、景気に配慮して年金額を下げずに804200円の基礎年金のままでした。 平成10年頃から大手金融機関が倒産していく中、次々に企業が倒産していきました。 金融危機による不況が広がる中で、年金額まで引き下げるとますます景気を悪化させる恐れがあり、消費をしなくなってしまう可能性があるので年金には手をつけませんでした。 あと、お年寄りが投票率が高いので選挙の際に支持を失うと選挙にも響きますのでその点も考慮して…^^; 本当は物価が下がったら下げるのがルールなのに下げずに、本来より高い年金を支給し続けました(平成27年3月分まで)。 また、国民年金保険料は平成10年4月から平成17年3月までは13300円で据え置き、厚生年金保険料も平成8年10月から平成16年9月まで17.35%に据え置きました(厚年はまだ平成15年3月までは賞与は含みませんでした。平成15年4月からは賞与を含んだ保険料として17.35%に相当する13.58%としました)。 その景気が非常に悪い頃に、歴史的には基礎年金満額はピークの金額を迎えて、804200円をピークに低下していく事になります。 平成16年改正の時に一旦平成12年度から1.7%を据え置かずにルール通りに金額を引き下げた年金で仕切り直したのが、本来の年金である「780,900円」でした。 この基準額からはキチンと経済変動を反映させていこうと。 しかしながら、本来の年金の隣には1.7%過払い分の年金が存在しており(特例水準という)、その年金が高いからそっちの高い方を支給し続けたので、この本来の年金が支払われる事はありませんでした。 過払いが解消するまでは、約10年間過剰な年金が支払われ続ける事になりました。 どのように解消していこうとしたかというと、過剰な分1.7%があるので、今後物価が上がってもその1.7%までは相殺していって年金は上げないようにしようと考えました。 例えば804200円の時に物価1%上がったら1%上げますけど、それを上げずに1.7%分の過払いがあるから1%分を相殺したら残りの過払いは0.7%になる。 また物価が0.7%上がったら過払い分0.7%と相殺すれば過払い分解消…を狙っていました。 しかし、想定外のデフレが長引いたので結局は相殺する事はできずに平成27年3月まで過剰な年金を支払続けました。 もうどうしようもないので力ずくで1.7%(平成24年ごろから2.5%まで過払いが拡大)を平成25年10月、平成26年4月、平成27年4月の3回にわたって過払い分を解消しました。 よって平成27年4月からは本来の年金へとようやく辿り着きました。 本来の年金は毎年度の物価や賃金の伸びにスライドしながら上下していきますが、上がった時にそのままの値を用いるのではなく、少子高齢化の進行を加味した数値である年金を抑制するマクロ経済スライドを反映するようになりました。 マクロ経済スライドは平成16年改正時に始まったものですが、何しろこの頃はまだ過払い分の年金を支給している間は発動できない事になっていました。 年金額の抑制策は10年遅れたのです。 簡単にいうと、少子高齢化で年金受給者は増えていくけども、年金を支える保険料を払う現役世代が少子化で少なくなるので、現役世代が支払う保険料の範囲内で給付を賄えるように、給付の方を範囲内に抑制するためにマクロ経済スライドというのが導入されています。 例えば毎年100万円入ってくる時に、高齢者が増えて支払いが120万円になって20万オーバーしてしまうと保険料の範囲内では収まらないので、その20万円分を抑制します。 ーーーー 3.年金額や給与が上がると経済的にも活発化するかも? ーーーー

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