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【Vol.521】冷泉彰彦のプリンストン通信『流転する政局、今週の状況』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「バイデンへの高齢批判、かなり厳しい状況か」 アメリカでは、共和党におけるトランプ一強という状況は加速中、一方のバイデンは人気降下中というトレンドは変わっていません。それどころか、それぞれの上昇または下降の勢いが増しているといって良いでしょう。  では、このままトランプ対バイデンの戦いになってトランプが勝利というシナリオがより確実になっているのかというと、この点については少し違う雰囲気が出てきています。一言で言えば、「行き過ぎてしまって、話が変わる危険が出てきた」ということです。  どういうことかというと、まずバイデンの方ですが、この間の支持率低下には大きく分けて3つの要因があると言われてきました。 「インフレは沈静化しても、物価上昇が止まっただけで元のようには下がっていない。つまり痛みは継続しているのに、バイデンには危機感がない」 「ガザ危機はエスカレートするだけであり、バイデンはネタニヤフを誠実に説得しているつもりかもしれないが、若者はバイデンも共犯だとして反発している」 「バイデンの健康不安説は出たり入ったりしているが、民主党内で一気にバイデン降ろしという動きまでは行っていない」  ということで、どの要素も決定的ではないものの、とにかく「中道から左派の世論はジリジリとバイデンを見放し」始めているのに、バイデンは「自分は悪くないし、路線変更もできないのでしない」という妙な均衡があったのでした。  ところが、ここへ来てこの3要素が一段と悪化してきています。 「インフレは下げ止まり、ガソリン価格は下がっていたが、これが下げ止まっている。その一方で、人手不足による労賃上昇が、改めて物価を押し上げる要因に」 「ネタニヤフは、ここへ来て100万都市ラファへへ侵攻すると宣言。下手をすると万単位の死者が出るという指摘も。ここでラファ侵攻が止められないと、バイデンの無能感が噴出してしまう危険性が出てきた」 「バイデンの高齢不安に関しては、特別検察官がハッキリと『記憶力の低下』を指摘したことで、世論の我慢は限界に」  という状況です。こうなると、そろそろ臨界点が近づいてきているのかもしれません。11日(日)に公表されたABCテレビと調査会社イプソスの連合による世論調査(この種のものとしては、かなり規模も信頼性もある調査です)によれば、「高齢のため合衆国大統領に相応しくないのは誰か?」という質問に対して、 バイデンだけ・・・・・・・27% トランプだけ・・・・・・・・3% その両方・・・・・・・・・59%  という結果となっています。これを組み替えて、2人の候補について、「高齢のため相応しくないかどうか?」という質問だったとすると、 バイデンがダメ・・・・・・86% トランプがダメ・・・・・・62%  ということで、この数字を元にすると「アメリカ国民の86%はバイデンが高齢のため大統領選出馬には不適格」だと思っているということになります。この種の調査はこれまでにも実施されており、それなりにバイデンに辛口の数字は出ていました。ですが、この86%というのは衝撃です。  仮に民主党と共和党の支持者が「50・50」だとして、共和党支持者は全員が「バイデンは不適格」だと答えていたとします。その場合、残りの50%(と仮定して)の民主党支持者の中で36%、つまり民主党支持者の72%がバイデンは不適格だとしている可能性があります。これは大変です。(トランプの場合は、12%)  ここまで来ると、どう考えても民主党サイドとしては「プランB」、つまりバイデンの名誉ある撤退と、代替候補の検討に進まざるを得ないと思います。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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