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【Vol.522】冷泉彰彦のプリンストン通信『政治不信の根源は制度の問題』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「もしトラ時代へ向けた自主防衛論を考える」  仮に「もしも」トランプが2025年1月に大統領に復帰した場合に、日本の安全保障をどうするか、いわゆる「もしトラ」問題というのは、やはり今から議論を始めておく必要がありそうです。  その場合ですが、トランプ当選の可能性が60%で、その後にNATOと日米安保をブッ壊す可能性が50%だとしたら、掛け算して30%となります。つまり、7割は現状維持の可能性があり、日本の安全保障を根幹から考え直す必要に迫られるのは3割と考えるのが妥当でしょう。  とは言っても、やはり重要な問題です。仮にトランプが日米同盟を破棄し、在日米軍を全て引き揚げたとした場合、日本の安全保障をどうするか、この議論は今からしておくべきと思います。論点はとりあえず7つぐらいが想定されます。  1つ目は、憲法改正と正規軍設置の問題です。これは、あくまで理念的というよりスローガンの問題で、もっと言えば名前の問題以上でも以下でもありません。そのようにしたほうが安全が保障されるのか、されないのかということは、その時点での世界情勢、東アジア情勢によると思います。最重要課題ではないと思います。  2つ目は、核武装の問題です。これは日本が核武装することになればNPT体制が崩壊し、同時に安保理常任理事国5カ国の核独占も崩壊、その結果として国連の事実上の崩壊まで行く危険性があります。日本の安全を保障するということでは、現実論としてマイナスと考えます。自衛隊を正規軍にするにしても、通常兵器における効果的な抑止力を洗練するのが軍略と考えます。  3つ目は、領土問題です。日米同盟が消滅したので、各方面の領土係争バランスが弱まるので、安全のために引き上げるという論議もあるかと思います。北方四島を放棄、竹島も尖閣も放棄ということで、その分だけ周辺国との緊張を下げておこうという考え方です。  ですが、これは下策であり、四島を放棄すれば留萌=釧路以北を狙ってくる可能性はあります。竹島を放棄すれば対馬奪取論が抑えられなくなるかもしれないし、尖閣を放棄すれば先島諸島あるいは旧琉球全域が係争の対象になるかもしれません。譲歩が安全を保障するということはないと考え、領土は堅守するべきです。  4つ目は、日韓関係です。これが崩壊しますと、日本の安全の保障はかなり厳しくなります。対馬海峡を最前線に「しない」というのが明治維新の目的の一つであり、国家存続のために膨大な犠牲を投入してきたのが近代日本です。竹島は現状維持しかないと思いますが、とにかくアメリカに言われなくても、日韓が強く連携するということが東アジアにおけるバランス維持、そして日本の安全の保障に重要です。  5つ目は、西側同盟です。仮に新トランプ政権がG7も離脱した場合には、日本は真剣にG6を基軸とした自由と民主主義の同盟強化に動くべきです。その場合には、韓国も入れるか、少なくとも韓国との関係は良好にしておくべきです。仮に自衛隊を正規軍とした場合には、G6で有志連合を作って例えば海賊対策であるとか、海洋航行権の警備などに参加すべきです。(続く)

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  • 冷泉彰彦のプリンストン通信
  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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