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池田清彦のやせ我慢日記 vol.258 -LGBT差別について~最高裁判決で思うこと~-

池田清彦のやせ我慢日記
池田清彦のやせ我慢日記 / 2024年2月23日発行 /Vol.258 INDEX 【1】やせ我慢日記~LGBT差別について-最高裁判決で思うこと-~ 【2】生物学もの知り帖~史上最大の霊長類ギガントピテクス~ 【3】Q&A 【4】お知らせ 『LGBT差別について-最高裁判決で思うこと-』  去年(2023年)10月25日、日本の最高裁判所大法廷は、トランスジェンダーの法律上の性別認定の条件として断種手術を課す国内法(性同一性障害者特例法)の規定を15名の裁判官の全員一致で違憲と判断した。私はかねてより、体への重大な侵襲を義務付ける性別変更要件は違憲であると主張してきた。  組を抜ける条件は指を詰めることだ、というやくざの世界と変わりない規定は、どう考えても異常である。先進国(日本は先進国ではないかもしれないが)でもかつては性別変更の要件に不妊手術を含めていたところが多かったが、現在この規定はほとんどの先進国では撤廃されており(調べた限りフィンランドは現在も要件に含めているらしい)、やっと日本も普通の国になったようである。この判決を受けて、不妊手術を受けずに性別変更が認められる人も現れ始めたようで、とりあえずは慶賀の至りである。人には自分のジェンダーを自分で決定する権利がある。  しかし、最高裁の判決に納得しない人もいるようだ。その一つの類型は、自分は不妊手術を受けて性別変更がやっと認められたのに、不妊手術をしないで性別変更ができた人は「ずるい」というものだ。自分は苦労して生きてきたのに、自分と似たような境遇の他の人が、苦労を回避して生きているのはずるい、というのはどうにも御し難い感情のようで、制度や習慣の改良を阻止する大きな要因のような気がする。  例えば、姑と嫁の間の軋轢も、多くはそういった感情に由来することが多い。「私が嫁に来た時には、食事の準備から掃除洗濯まで一手に引き受けて、家族みんなのために尽くしてきたのに、息子の嫁ときたら、ちっとも働かないで自分が手を抜くことばかり考えている」。一方、嫁の方は、「私と夫を比べれば、私の方が遥かに家事一般をしているのに、姑は夫には文句を言わないで私にばかり小言を言う」。  これらが姑と嫁の不満の典型的なパターンだ。しかし、ほとんどすべての労働は技術の進歩によって、苦役から解放されるように進歩していくわけで、そのうち、万能型の家事ロボットが開発されれば、姑さんも嫁さんも家事からは解放されるので、家事分担をめぐる家族内の軋轢は過去の話になるだろう。

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