ドクター畑地の診察室231 .2024.2.25.
現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です 。
世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信!
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三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる
松阪市民病院院長
診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当
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新しい検査の幕開け
毎日毎日外来にはいろいろな患者さんが訪れます。呼吸器内科を訪れる患者さんのうち、無視できない数の患者さんは発熱患者さんです。当然、呼吸器内科を訪れる患者さんの発熱ですから、鑑別すべき疾患はいろいろありますが、最も多いのは肺炎と言うことになろうかと思います。それ以外にも、いわゆる風邪引きの患者さんが大勢いらっしゃいます。
さて、この肺炎になった患者さんたちですが、従来ですと肺炎の原因を探るために喀痰培養検査を行っておりました。しかしながら、この喀痰培養検査はネックがあります。喀痰培養を行い、検出するまでに時間がかかること、そしてさらに検出できた後、どのような抗生物質が有効なのかということを調べるために、さらに時間がかかること、通常の細菌検査では、検出できないような細菌やウィルスは培養検査を行っても手掛かりが掴めないことです。結果が出るまでに数日の間治療しないわけにはいきません。したがって、その肺炎がどのような肺炎であるのか、ある程度推測して経験的に治療を行うことになります。
風邪ではどうでしょうか?風邪ひきは医学用語で言うと、上気道炎と言うことになります。(肺炎は下気道感染と言うことになります。)多くの場合、ウィルス感染が原因で、ウィルス感染として最も多いウィルスはライノウィルス、次いでコロナウィルス(COVID19ではない)と言うことになります。また、季節によってはインフルエンザ感染が流行っていたり、RSウィルス感染が流行っていたり、COVID-19が流行っていたりと言うこともあります。インフルエンザウィルスやCOVID-19は抗原検査が可能であり、小児領域では、RSウィルス感染も抗原検査が有効であると言われています。
しかしながら、ラインウィルスやコロナウィルスを測定する抗原検査はない上、大人ではRSウィルス感染を抗原検査で診断する事は難しいと言われています。多くの場合、風邪の原因ウィルスはわからないまま治療することになってしまいます。
最近になって、松阪市民病院には画期的なPCR装置が入りました。フィルムアレイと言うPCR装置です。風邪引きの場合は、インフルエンザの抗原検査と同様、鼻腔から検体を採取し、解析を行うと、1時間程度で風邪の原因として多い10種類以上のウィルスや細菌検査がPCR検査で施行でき、原因ウィルスを同定することが可能です。今まではわかりようがなかった、ライノウィルスやアデノウイルスなど特定のウィルスを同定することも可能になりました。(この検査は呼吸器パネル検査として保険償還されています。)
肺炎の場合は喀痰を提出することにより、これも1時間程度で肺炎の原因となる主な細菌やウィルスを10種類以上検出することができ、なおかつその細菌が抗生物質に対して耐性遺伝子を持っているかどうかまで判明させることができます。(この検査は、肺炎パネル検査と言いますが、まだ保険償還されていません。しかしながら、本年度改訂される、日本呼吸器学会の肺炎治療ガイドラインにはパネル検査を推奨すると記載される予定ですので、いずれ保険適用を取得するものと思われます。)松阪市民病院では、現在は保険適用は無いものの、病院負担で入院した肺炎患者の肺炎パネル検査を行っています。
このような呼吸器パネル検査や、肺炎パネル検査を行うことができるフィルムアレイと言う装置ですが、必ずしも普及しているとは言えません。現時点で日本では、300施設程度の病院で導入されており、三重県で導入されているのは、松阪市民病院を含めて3病院です。しかしながら、どうしても病院の金銭的持ち出しが多くなってしまうため、患者さんの利益になる検査ですが、日常臨床ではあまり行われていないのが現状です。
医学の進歩はめざましく、ここ10年の間にかなり劇的に変化してきています。従来は細菌培養の結果をまたないと、原因となる細菌はわからなかったわけですが、現在ではこの検査を行うと、1時間程度で原因菌が判明してしまいます。肺炎の原因がウィルスであった場合、従来ですと原因ウィルスがわからなかったわけですが、この検査を用いると判明してしまいます。
患者さんの負担はなく、メリットが多い検査ですので、病院の持ち出しが多くなってしまいますが、松阪市民病院では現在積極的にフィルムアレイ検査を行っています。近い将来、この検査がもっともっと普及し、多くの病院で速やかに原因が判明するような時代が来る可能性が高いかもしれません。
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ドクター畑地の診察室231.2024.2.25号
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畑地 治
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松阪市民病院院長
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◆2024年1月
https://www.mag2.com/archives/0001688238/2024/01
2024/01/28 睡眠時無呼吸症候群
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