日朝「失われた２０年」間の「拉致」公式・非公式接触の全記録

＼＼＼　━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━　／／／ 　　　　　　　　　　辺　真一メールマガジン 　　　　　　　マ┃　ル┃　秘┃　レ┃　ポ┃　―┃　ト┃　 　　　　　　　━┛　━┛　━┛　━┛　━┛　━┛　━┛　 　　　　　　　　　　　 2024.02.25　Vol.361 　　　　　　　　 ［毎月5,15,25日発行＋号外あり］ ／／／　━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━　＼＼＼ 　小泉純一郎元総理が２度目目の訪朝（２００４年５月）をして以来、日朝首脳会談を実現した日本の総理は誰一人いない。 　その間、韓国は盧武鉉（ノ・ムヒョン）と文在寅（ムン・ジェイン）の２人の大統領がそれぞれ２００５年と２０１８年に平壌を訪問し、首脳会談を行っている。 　米国もまたトランプ大統領が２０１８年６月、２０１９年２月と、２度金正恩（キム・ジョンウン）総書記と会談しており、中国の習近平主席も金総書記との間で相互訪問を実現させている。さらに、ロシアのプーチン大統領も２０２３年に訪露した金総書記と会っており、今春にはプーチン大統領が答礼で平壌を訪問し、２度目の首脳会談が予定されている。 　拉致やミサイルなどの懸案を抱えている日本も北朝鮮との対話は不可欠であることは歴代首相の誰もが認めている。岸田文雄首相も例に洩れず、金総書記との首脳会談に意欲を示している。ではなぜ、これまで日朝首脳会談が実現しなかったのか？岸田政権下で果たして念願の日朝首脳会談が実現するのか？この２０年間の日本の対北朝鮮アプローチを時系列でみてみる。 ２００５年９月１３日 小泉純一郎首相は３度目の訪朝の可能性について「可能性まで否定するわけではないが、私はその可能性は極めて低いと思っている」と述べ、北朝鮮との関係について「国交正常化には乗り越えるべき難問がある。来年９月（の自民党総裁任期切れ）までに解決されるかということは今、断言できない」と述べ、首相在任中の正常化実現に慎重な姿勢を示した。 ２００５年１１月４日 自民党の山崎拓前副総裁は日本テレビの番組で小泉首相の再訪朝の可能性について「３回目の訪朝は日朝国交正常化が実現したその調印式だ。（任期中に間に合うかは）五分五分だ」と発言。 ２００５年１２月６日（～９日） 外務省の斎木昭隆アジア大洋州局審議官と伊藤直樹北東アジア課長が中国の瀋陽で宋日昊（ソンイルホ）外務省アジア局副局長と極秘接触。 ２００５年１２月２４日（～２５日） 北京で日朝政府間対話。日本側から斎木昭隆アジア大洋州局審議官、北朝鮮側から宋日昊外務省アジア局副局長が代表として出席。日本は北朝鮮に対して拉致された疑いが濃厚な３４人（特定失踪者）のリストを渡し、情報提供を求める。 ２００６年２月４日（～８日） 北京で日朝包括並行協議。原口幸市・日朝国交正常化交渉担当大使が宋日昊・朝日国交正常化交渉担当大使に小泉首相の金正日（キム・ジョンイル）総書記宛てのメッセージを口頭で伝達。 ２００６年９月２６日 小泉首相辞任　安倍晋三首相就任 ２００６年１１月１５日 日本政府は北朝鮮の核実験に対する国連安全保障理事会の制裁決議に基づく措置として自動車やたばこ、電化製品など３３品目の「ぜいたく品」（３３品目の２００５年の輸出額は約１１億円）の北朝鮮輸出を禁止。 ２００６年１１月 山崎拓・前副総裁が極秘訪朝し、宋日昊日朝交渉担当大使と接触。宋大使は政府が拉致被害者と認定した松本京子さんについて「そのような人は存在しない」と回答。 ２００７年１月９日 山崎拓・前副総裁が再訪朝し、北朝鮮に「とにかく国交正常化の暁には北朝鮮にいるすべての日本人を日本に返してくれ」と要請。 ２００７年３月７日（～８日） ハノイで開かれる日朝国交正常化作業部会。原口幸市・日朝国交正常化担当大使は北朝鮮代表の宋大使に北朝鮮が「解決済み」との態度を「未解決」に改めれば制裁強化はせず協議を継続し、「具体的進展」があれば核施設の停止・封印の見返りのエネルギー支援を検討する用意があることを表明。 ２００７年４月 北朝鮮側から安倍晋三首相の政務秘書官だった井上義行氏（現参議院議員）に「拉致問題で協議したい」と自身に打診。日本側は外務省幹部をシンガポールに派遣し、北朝鮮側と接触。７月の参院選後に再協議することになったが、参院選（７月２９日）で自民党が敗れ、立ち消えになった。井上政務秘書官は２００３年１２月（２０～２３日）と２００４年１月に極秘訪朝し、「自分はトップ（金正日総書記＝当時）から日本に対する権限をすべて委任された」と自己紹介する人物と接触していた。 ２００７年８月２０日　 安倍首相は訪問先のインドネシアで「拉致、核、ミサイル、不幸な過去の清算は積極的に取り組み、正常化を目指したい」と発言し、「拉致、核、ミサイル」の３点セットに北朝鮮が求めている「不幸な過去の清算」を初めて加えた。