メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

第433号:林田直樹の「よく聴く、よく観る、よく読む」

林田直樹の「よく聴く、よく観る、よく読む」
  • 2024/02/28
    • シェアする
林田直樹の「よく聴く、よく観る、よく読む」2024年2月28日 Vol.433より 林田直樹です。 noteにも書きましたが、2月5日の夜に両足に熱湯を浴びる大火傷をしてしまいました。全治2週間どころか2か月を要するほどでしたが、何とか入院も手術もせずに、松葉づえでしのいでいます。 https://note.com/naokihayashida/n/nb0e1c4cae3aa 水ぶくれが破れた2月19日頃はとても痛かったのですが、ここ数日で痛みはほとんどなくなり、歩くのもだいぶ楽になりました。無理すると治りが遅くなるということを身をもって実感した次第です。 【音楽のことば】 「もしそれが芸術であるなら、それはみんなのためのものではない。そして、もしそれがみんなのためのものであるならば、それは芸術ではないのである」 (アルノルト・シェーンベルク) ※出典:「図鑑 世界の作曲家」(DK社編 岡田暁生日本語版監修 東京書籍)233ページ 原出典:「シェーンベルク音楽論選 様式と思想」(上田昭訳 筑摩書房) 真に美しいものは多数の側にはない。少数の側にある。それは芸術の本質だと思う。シェーンベルクもまた、はっきりとした形でそれを言葉にしている。 今年生誕150年の作曲家シェーンベルク(1874-1951)の音楽にいかに近づけるかが、今年の最大の課題の一つだと思っている。世紀末ウィーンの文化の中から生まれ出てきたシェーンベルクの美学は、シューベルトやブラームスやマーラーのその先にある。クリムトやシーレの絵に心を寄せる人であれば、決して縁遠いものではない。 前衛でもあり保守でもあるようなシェーンベルクの音楽の魅力と謎に少しでも近づくためには、東京・春・音楽祭のディオティマ弦楽四重奏団による6時間にわたる弦楽四重奏曲全曲演奏会(4月6日14時開演、休憩3回、東京藝術大学構内・奏楽堂)は注目だ。最後を飾るのはもちろん、ロマンティックの終着点のような名作「浄められた夜」。 なお最近、現代音楽の第一線で活躍するディオティマ弦楽四重奏団にメール・インタビューをおこない、長文の返答をもらってそれをまとめて原稿に仕上げたばかりである。シェーンベルクの音楽美学、ブラームスとの関係、ウィーンらしさとは何かについて、含蓄深い読み物となった。近日中に東京春祭の公式サイトにアップされる。 https://www.tokyo-harusai.com/program_info/quatuor-diotima/ 【近況報告】 ●新刊「コンサートホール×オーケストラ 理想の響きをもとめて 音響設計家・豊田泰久との対話」(豊田泰久・語り手 林田直樹・聞き手 潮博恵・解説 アルテスパブリッシング 税別定価2400円)が発売されました。 https://artespublishing.com/shop/books/86559-289-4/ サントリーホールやミューザ川崎から、ウォルト・ディズニー・コンサートホールやピエール・ブーレーズ・ザール、フィルハーモニー・ド・パリまで、世界に名だたるコンサートホールの音響設計に携わってきた豊田泰久さんは、クラシック音楽業界では国境を越えたレジェンドと言えるほどの存在です。 その豊田さんと忌憚なく徹底的に長時間対談した今回の本は、世界中の主要な名指揮者やオーケストラについてのレアな情報もたくさん盛り込まれた、楽しい読み物となっています。音楽ファンや業界関係者に大きな波紋を巻き起こすと確信します。 https://amzn.to/3ThfuBx ●「ONTOMO MOOK レコード芸術2023年総集編」(音楽之友社)が発売されました。その中で「クラシック界2023年の出来事を振り返る」という長文の記事を書いています。坂本龍一と西村朗の死、ペトレンコ指揮ベルリン・フィル、サヴァールやオラフソンの来日、新国立劇場「シモン・ボッカネグラ」、そして“推し”の時代についての見解も。 https://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?id=963750 ●OTTAVAのオンラインカルチャー講座「OTTAVA Accademia 音楽とことばの教室」の3月分は指揮者の飯森範親さんがゲストです。3月4日月曜日の20時から。無料でどなたでもライヴ、オンデマンドともご覧いただけます。 飯森さんは私と同じく昭和38年5月生まれ。ハイドンやモーツァルトから西村朗やロシアの前衛まで、幅広いレパートリーで活躍されています。大好評だった沼尻竜典さん、山田和樹さんに続いて、指揮者が3人続きますが、今回もざっくばらんで愉快なトークがお楽しみいただけると思います。 https://ottava.info/accademia/%e3%80%902024%e5%b9%b43%e6%9c%88%e8%ac%9b%e5%ba%a7%e3%80%91%e9%9f%b3%e6%a5%bd%e3%81%a8%e3%81%93%e3%81%a8%e3%81%b0%e3%81%ae%e6%95%99%e5%ae%a4-11/ ●月刊「東京人」4月号(都市出版)のクラシック特集「まちに響け!クラシック」が3月3日に発売されます。作曲家・加藤昌則さん、指揮者・沖澤のどかさんと私の3人での座談会に加え、「音楽之友社、Web戦略に未来を賭ける」という記事も書いています。 後者では、復活を目指しているオンライン版「レコード芸術」がどのようなものになるのか、具体的な情報を盛り込みました。こうした記事が出ることによって、既成事実を積み上げて可視化させ、オンライン版レコ芸の復刊を確かなものにしようという狙いです。「雑誌とは何か」についての強い意見も簡単にですが書いています。 今回の「街とクラシック」というテーマは、編集会議に参加した私からのアドバイスも少し関係しています。巻頭グラビアでは、日本古来の絵巻物に描かれた街で歌い踊る人々の様子が展開されています。このページには執筆していませんが、17世紀の「踊尽草紙絵巻」を今回の特集に加えることができて、とてもうれしく思っています。 https://amzn.to/48EHDXE

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • 林田直樹の「よく聴く、よく観る、よく読む」
  • 音楽ジャーナリスト・評論家の林田直樹が、クラシック音楽の公演や新譜の中から選り抜きの重要な情報をお伝えします。35年以上の取材経験を踏まえつつ、現場での最新エピソード、美術や文学などクロスジャンル的な題材も盛り込んだ「音楽随想」は、最も力を入れている人気の読み物です。 創刊して12年以上がたちますが、根強い購読者の皆さんに支えていただいています。インターネットラジオOTTAVAの熱心なリスナーも多く加入しており、番組関連の情報をここで最初に発信することも。購読者の特典として、個別のメールのやり取りが可能。「不定期刊行」ですが、基本的にはほぼ月末に2本を配信しています。
  • 550円 / 月(税込)
  • 不定期(主に月末2本)