習氏は毛沢東路線回帰
「流動性の罠」へ転落
金融政策で逃切り困難
無益な争いで時間浪費
中国は、3月5日から年1回の全人代(中国の国会)を開催する。ここで、24年の経済成長率目標が発表される予定だ。習近平国家主席は、すでにGDPを2035年までに約2倍にし「中国式の近代化」を成し遂げる方針を立てている。24年の成長目標は、これに沿って昨年同様5%程度に設定される見込みだ。中国には、短期的な成長率目標達成だけで済まされない難問を抱えている。不動産バブル崩壊によって発生した、過剰債務処理である。
習氏は、この難問を小手先の対策でやり過ごそうとしている。中国国務院は3月1日、大規模な設備更新と消費財の下取りを推進する計画を承認した。つまり、自動車や家電製品を含む老朽化した消費財の更新や買い替えを加速させるというのだ。また、建築や都市インフラ、交通運輸、農業、教育、医療などの分野で設備更新を促進するため、財政と金融による支援を拡大する、としている。
こういう政策は、「平常時」に行うレベルのものだ。不動産バブル崩壊という現在の「緊急時」には、余りにも低レベルの話である。ハッキリ言って「焼け石に水」なのだ。
習氏は毛沢東路線回帰
習政権は現在、3期目を迎えている。これに伴い5年間の経済重点政策を発表しなければならない。この場が、「3中全会」と言われるものである。昨年の11月が、過去の例からみてその時期であった。だが、まったくその気配もなく沈黙したままである。少なくとも「全人代」開催前に、「3中全会」を開かなければ全人代開催の意味は割り引かれる。中国経済は、こういう既定の日程を無視せざるを得ないほど、混乱しているのだ。
習氏が、初めて国家主席に就任した後の「3中全会」は、従来とは路線が異なっていた。市場経済から計画経済への転換を意図していた。ここで、改革開放後の「3中全会」をみておきたい。1978年の第11期3中全会では、トウ小平が主導して改革開放路線を決定した。1993年の第14期3中全会では「社会主義市場経済体制」を打ち出し、現在の中国経済の基礎がつくられた。習近平指導部が、主導した2013年11月では、次のように微妙な方向転換をした。
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