■日本経済はインフレ時代に入った
日本経済はデフレから脱却し、本格的なインフレ時代に入ったとみ
るべきだ。米国はインフレに苦しんだが、克服できそうだ。景気に
大きな落ち込みはなく、株式市場は次の成長企業を探すはずだ。
時代は大きく回転した。日本はインフレ率2%時代を迎えつつある。
これを受けて、これまで積み上げてきた現預金はリスク資産に移し
て、本格的な資産運用をはじめるべきだ。
日本がインフレになったのは、新型コロナ危機で供給過剰型経済が
突然終わりを告げたからだ。それまで日本経済を覆っていた財・サ
ービスと労働の過剰供給が正常に戻ったのだ。
コロナ禍までは、客が入らないのに深夜まで営業している飲食店や
空車状態で街中を走り続けるタクシーなど、過剰供給状態が常態化
していた。それが、コロナを機に一転したのだ。
半導体なども安定供給が難しくなった。追い打ちをかけるようにロ
シアのウクライナ侵攻だ。これが、原油や天然ガスなどのエネルギ
ーの供給を阻害した。これは現在も続いている。
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日本がインフレ時代に入ったと判断するのには4つの理由がある。
まず、輸入インフレだ。海外のインフレが、日本の消費者のもとに
届くのには3年ほど時間がかかる。影響はこれからなのだ。
次いで高齢者がコロナを機に労働市場から撤退をはじめたからだ。
高齢者の労働参加こそが、日本の賃金デフレの原因だった。これが
終了したことで日本の賃金は上昇軌道に入るはずだ。
さらに、日本の労働力が海外に負けない圧倒的国際競争力を手にし
たからだ。日本の労働者の賃金は長く低位に押さえられている。加
えて円安も続いている。
そして、日本の住宅用不動産価格が緩やかに上昇トレンドに入った
からだ。このことは、国土交通省が発表している不動産価格指数を
見れば明らかだ。
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経済学では、インフレは3つの要素で成り立つとされている。すな
わち「インフレへ期待の高まり」「人手不足がもたらす賃金上昇」、
そして「石油危機や半導体不足などの供給ショック」だ。
この中で、人手不足だけが経済現象に起因するものだ。労働需要が
労働供給を上回れば、賃金はインフレになる。これに引っ張られて
その他の物価も上昇するのだ。
ここで、大事なことが景気だ。インフレにしろ、デフレにしろ、景
気の動向こそが諸物価の連続的な上昇・下落を生み出す原因になる
からだ。
★
日本の物価は、少なくとも2025年までは高水準を維持し続けるは
ずだ。資産価格が緩やかに安定的に上昇トレンドに入ったからだ。
そのため、資産デフレのリスクは消え去ったのだ。
資産価格が緩やかに、それでも安定的に上昇トレンドに入ったこと、
そして資産デフレのリスクが消えたことが日本国民全体に認識され
れば期待インフレ率は正常に保たれるようになるはずだ。
賃金については、団塊の世代に多くが引退し、第二次ベビーブーマ
ー世代が賃金カーブのピークを付ける50代になる。これが賃金に
上昇圧力をかけるはずだ。
さらに、まもなく海外のインフレの影響が日本の消費者のもとに届
く。海外の供給ショックに起因するインフレ圧力は2025年まで続
くことが予想されるのだ。
これらを総合して判断すれば、日本のインフレは2025年まで続く
ことがわかるはずだ。景気の後退さえなければ、2029年まで続く。
ただ、悪いことが重なれば、デフレに戻る可能性もある。
カギを握るのが、日本銀行だ。インフレになってから、最低1回の
景気循環を経験し、脱インフレの形が構造的に固まるまで、日本銀
行は粘り強く金融緩和政策を続けるべきなのだ。
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