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伏木悦郎のメルマガ『クルマの心』
第537号 2024.2.13配信分
●自動車は、いったいどこから生まれてきたのだろう?
人は何のためにクルマに乗るのか?「楽しいからに決まってる」
軟弱な答えに聞こえるだろうが、これまで生きてきて得た結論だ。
モビリティ(Mobility)は『人やモノ/コトを空間移動させる能力
や機構』を指す。
クルマに限らず交通領域全般に適応される概念を象徴的に表す言
葉であり、その充足は”技術の進歩”という近代文明特有の価値観
が原動力になっている。私はそう考える。
自動車は、石油に触発される形で誕生した。19世紀に入り潤沢に
得られるようになった石油(1859年米国ペンシルバニア州タイタス
ビルのドレーク油田に始まる=機械掘りによる大規模商業油田)の
存在がすべてと言っていい、と思う。
20世紀という時代を形作った文明最大の発明のひとつ自動車は、
ドイツのカール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーがシュツット
ガルト郊外の異なる街でほぼ同時期(1886年)に誕生したとされる。
その前提条件に文明の原資たるエネルギー=石油が欠かせなかった。
しかし、近代文明発祥の地ヨーロッパには発明を活かせる大規模
油田は存在しない。シュツットガルトのメルセデスベンツ博物館の
最上階(8F)には初期の自動車や内燃機関のレプリカとともに、
当時存在した燃料(ガソリン)が展示されている。ベンジンの名で
売られていたその販売は『薬局』でなされたという。
19世紀の自動車の顧客は、貴族に代表されるごく一部の富裕層に
限られていた。すでに馬車が文化として根付いており、コーチビル
ダーの名が残っているように、製造手段は一品モノの手作業であり、
台数的にも高が知れている。
ダイムラーAG本社の道を挟んで隣接するメルセデス博物館は、
自動車の起源からの歴史が学べる矜持を感じさせる設えであり、記
されている事柄や展示物は必見。マニアを以て任ずるなら「現物を
見てから言え」となるはずだ。
●「クルマはガソリンで走るのです」高度成長期のTVCMから
ここでもう少し時計の針を戻す必要が生じる。18世紀の英国に始
まる産業革命は、科学の進展と文明の原資たるエネルギー(火力を
得る熱源)の重要性を決定づけた。
鉄は国家なりというが、鉄鉱石や砂鉄などを溶かして成形する製
鉄が文明を左右した。その熱源は、まずは木材そのものを燃やすこ
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