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「小島嵩弘のパウダールーム」(2024年 3月6日 第 662号)
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2024.3/6
劇団の時代、工具が欲しかった。
大道具を作る時に材木を切る電気ノコギリとか、切れ味抜群のニッパとか、
ペンキを塗る大きなハケとか、言ったらキリがないくらい工具が欲しかった。
想像も及ばないような貧乏劇団だったから、毎回の公演で材木やペンキを買うと予算オーバーで、
道具まで手が回らなかったのだ。劇団の何が辛いって、大道具制作が本当に辛かった。
じゃあ演出で建て込みの少ない舞台にすれば良いじゃん!ってことなんだろうけど、
お客さんが劇場に入って来て、セットに圧倒され「ここで一体何が始まるのか?」「どんな芝居なんだ?」と、
想像させるところから芝居が始まっているとオレは思っているから、
そこにも精一杯の建て込みをしないとならないと妙な使命感に燃えていた。
実際、芝居って空間が限られてしまっていて、オレなんかひねくれているから、
どうせその広い所が芝居やる場所でしょって、冷めた目で他の劇団などの芝居を見に行っていた。
劇場に入るや否や予想し、ほらねとかって勝手に客席でセコイプライドにぶら下がっていた。
だからオレが演出する舞台は、幕が張ってあってセットを見せなかったり、
わざと大きな黒布を縫い合わせて舞台を覆ってみたり、様々な工夫をした事もあった。
その布だってみんな手で縫っている。
あ~大型ミシンがあれば楽なのにと。
もちろんミシンも多用した。
衣装もあって時間がなくて作り物ばかりで公演の本番に間に合わなかったから、
芝居の稽古に関係ない劇団員が、稽古中に空いてる場所で針仕事もこなさなきゃならなかった。
作家は台本を書き上げるとすぐ、衣装担当に変わり、針と糸で衣装を作り、
オレから発注があると先頭に立って衣装や幕を縫い上げた。
学校でも会社でも家でもそうだと思うけど、言う方は楽な物なのだ。言われた側はいつも苦労する。
だからオレは発注するけど、それ以外に曲を作ったり、舞台をもっとより良いもにするように考えたり、
演出、芝居自体を売りに営業に行ったりもした。
芝居を成功させるために上手く芝居が出来ない役者さんと稽古の後、自宅で稽古したり、
誰よりも働く事でそのあたりは勘弁してもらった。
もちろん大道具も作る。
その時には舞台監督の門藤の言うことを聞いたり、仕掛けを考えたりしながら、
大道具も男手がいるので参加した。いつも思ってた。道具があれば時間が半分で済む!って。
大道具を作る場所もいつも毎回公演の度に探すのに、道具が欲しくてたまらなかった。
身体が楽だし、みんなを休ませてあげられるのだ。
あんな思いしながらよく芝居をやっていたと、感心する。
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