メルマガ読むならアプリが便利
アプリで開く

すべて薬で解決するか

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室233 .2024.3.10. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** すべて薬で解決するか  呼吸器内科で扱う疾患は範囲が広いです。代表的な疾患としては、肺癌、COPD、間質性肺炎肺炎、喘息などがあげられます。さて、それ以外にも多くの疾患があるわけですが、仮にこの4つの疾患を代表的な疾患として、今から話を述べさせていただこうと思います。  喘息や肺癌については、説明するまでもなくわかっている方が多いと思いますが、COPDや間質性肺炎についてはわかっていない方も多いと思うので、説明させていただきます。       COPDはタバコによって起こってくる肺の病気であり、慢性気管支炎と肺気腫を合わせたものです。息をすることはできるのですが、息をはくことができなくなり、特に運動する時、肺の中の空気を外に出すことができなくなるため、肺がパンパンに膨らんで新しい空気を取り入れることができなくなる病気です。  間質性肺炎は最近では歌手の八代亜紀さんがなくなったことで知られている病気ですが、簡単に言うと肺が硬くなって小さくなる病気です。タバコを吸う人に多く起こってきますが、それだけとは言えず、例えば膠原病等でも起こってくることもあり、原因不明のことが非常に多くあります。  さて、私が医師になってから、もう30年以上経過しますが、この中では著しく治療が進歩したもの、進歩がそれほどではないものが混在しています。この30年で最も治療法が進歩した疾患は肺癌でしょう。30年前は肺がんと言えば、抗がん剤の点滴しかなく、苦しい点滴をしても、次々と患者さんが亡くなっていたことを思い出します。制吐剤の開発により、いつの間にか肺癌の抗がん剤の点滴が苦しくなくなったと感じ出したのは25年ほど前からでしょうか、ここ10年はさらに新しい嘔気を止める薬剤が次々と開発され、ほとんど吐き気を感じることなく、抗がん剤の点滴ができるようになりました。それだけではありません。分子標的薬の登場により、個別化医療が現実のものとなりました。分子標的薬の対象にならない方も、免疫チェックポイント阻害薬で劇的に改善する人も多く、進行期肺癌であっても、昔では考えられなかったことですが、治癒する人もいます。  私が卒業した30年前は喘息の患者さんは多く入院していました。卒業した後、勤務したのが四日市の病院であったこともあり、毎日毎日多くの患者さんが発作を起こし、救急外来を受診していたものです。しかし今はどうでしょうか。喘息で入院する患者さんは劇的に減少し、救急外来を訪れる喘息の患者さんも少なくなっています。適切な吸入薬の使用と、重症患者さんに対しては、生物学的製剤の登場により、経口のステロイドを使った副作用が多い治療を使うことなく、寛解が議論されています。  残念ながら、COPDや間質性肺炎はあまり治療が進んでいません。COPDの治療に関しては薬物療法で気管支拡張剤吸入を超えるものが出てきていません。個々の吸入薬の性能は良くなりましたが、根本的に病態を変えてしまう薬は出ていません。間質性肺炎については抗繊維化薬の登場により予後は若干良くなったものの、まだまだ充分ではありません。しかしながら、様々な薬剤が開発中であり、20年後には最も治療が進歩した疾患になっているかもしれません。  どのような病態も薬で治療していくわけですが、それのみでは充分ではありません。体の元気が維持できるかどうか、そこが大きなポイントになってきます。多くの呼吸器疾患では、進行してくると体が痩せてきて動けなくなってきます。体の元気を維持するために、あるいは動けなくなった体を少しでも元気にするために、リハビリがあります。このリハビリは特に治療が進歩してきたと言えない疾患(COPDなど)においては重要です。もちろん肺癌患者さんも元気でないと治療はできませんので、リハビリなどを導入することにより、元気さを維持していくことが投薬とともに大切になってきます。  どのような病気であれ、投薬により病気を改善させていくことと、リハビリや自ら積極的に食事を摂取し、体を動かすことにより元気さを維持していくことが治療の両輪になると考えています。薬だけでは充分ではありません。 ************************* ドクター畑地の診察室233.2024.3.10号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2024年02月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2024/02 2024/02/25 新しい検査の幕開け 2024/02/18 バレンタインdayに思う 2024/02/11 マラソン大会エントリー 2024/02/04 救急車の7,700円

この続きを見るには

この記事は約 NaN 分で読めます( NaN 文字 / 画像 NaN 枚)
これはバックナンバーです
  • シェアする
まぐまぐリーダーアプリ ダウンロードはこちら
  • ドクター畑地の診察室
  • 現役呼吸器内科、総合内科専門医のメルマガです。世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信!
  • 220円 / 月(税込)
  • 毎週 日曜日(年末年始を除く)