労働分配率が70%以上にも及ぶ、人件費がギリギリの中小企業を支援するならともかく、税金の支援金が大きくなる大企業にまでこんな制度を導入するとは、まさしく 「ドロボーに追い銭」 なのです。
政治献金をくれる大企業には、ちょっぴり賃金アップをするだけで税金の大盤振る舞いがなされ、中小企業はロクに賃上げさえ出来ないのですから、これまた置き去りです。
なぜマスメディアはこれを批判しないのでしょうか。
内部留保(利益剰余金)をたんまり貯め込んできた大企業にこんな支援をするより、労働者の7割を占める中小企業にこそ支援すべきです。
岸田政権の国民への「まやかし策」もいいところでしょう。
この制度を使って賃上げ出来るのは、労働分配率40%という苛酷な大企業ぐらいであり、すでに労働分配率70%前後の中小企業にとっては、1・5%の賃上げでもやっとのことでしょう。
こんな、まやかしで賃上げが本当にうまくいくと思っているところが、岸田首相の世襲3代目の甘いボンボン気質の思考力なのです。
こんなことをやる前に、「消費税の廃止」やら、「派遣労働の禁止」、「外国人技能実習制度の撤廃(現在さらなる改悪を模索中)」のほうこそを最初に行うべきでしょう。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図――政治・経済・社会・マネー・投資の闇をえぐる
第89回(2024年3月11日号)
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
みなさま、こんにちは!
「衰退ニッポンの暗黒地図」をお届けするマネーアナリストの神樹兵輔(かみき・へいすけ)です。
さて今回は、「日本を低賃金国にしてきた自民党と経団連が、今度は賃上げすれば法人税減税という『泥棒に追い銭』政策の笑止千万!」というテーマでお届けしたいと思います。
日本の労働環境を見渡した時、「賃金が低いのは日本人の労働生産性が低いからだ」という人が多くいます。
しかし、これは本当でしょうか。
日本は「おもてなし文化」で余計なサービスが多いから、労働生産性が低いのだ――などという人もいます。
しかし、本当に本当でしょうか。
これはただの数字のトリックにすぎないことに気づくべきです。
--------------------------------------------
日本を低賃金国にしてきた自民党と経団連が、今度は「賃上げ」で法人税減税という「泥棒に追い銭」政策の笑止千万!
--------------------------------------------
労働生産性は、概ね次のような2つの計算式で導き出すのがふつうです。
●物的労働生産性=「生産物の量÷労働量」
●付加価値労働生産性=「付加価値額(売上-仕入れ)÷労働量」
ちなみにこうした計算式で導き出された日本の労働生産性は、2022年の公益財団法人・日本生産性本部のデータによると、1時間当たりの購買力平価換算の付加価値額が52・3ドル(年間85,329ドル)、OECD加盟国38カ国中30位に相当します。
日本の労働生産性は、非常に低い順位になっているのです。
これはポルトガルやハンガリーといった旧ソ連のワルシャワ条約機構を結んでいた東欧7カ国などと同水準なのです。
ただし、2021年の「製造業」に限定した労働生産性は、もう少し高く 94,155ドルで米国の約6割の水準でした(OECD加盟国の中では第18位)。
ちなみに、かつての日本の「製造業」に限定した労働生産性は、1985年以降の円高もあって、世界のトップクラスを2000年代の初頭まで続けていたこともあります。
さすがに「モノづくり大国ニッポン」という時代も謳歌していたわけです。
たとえば、日本の製造業の労働生産性は1995年と2000年にOECD加盟38カ国中では第1位でした。
しかし、05年に第7位、10年に第10位、15年に第14位、21年に第18位と次々に順位を落としていきます。
また、この頃の日本の「一人当たりGDP」も常勝1位の小国ルクセンブルグに次ぐ2位(1988年と2000年)や3位レベルで推移していました。そして、日本人の賃金水準も同様につねに10位以内の上位ランクを維持していたのです。
さらに付言すれば、スイスに拠点をおくビジネススクールのIMD(国際経営開発研究所)が毎年発表する「世界競争力年鑑」の総合力で、日本は1989年から1992年の4年連続で、世界第1位でしたが、その後は30年以上凋落を続け、2023年版の最新の年鑑では過去最低の35位に落ち込んでいます。
これらのデータが何を意味するかといえば、1985年の「プラザ合意」以降に円高不況に見舞われてから、金融緩和に舵を取った日本はバブルを謳歌したものの、90年のバブル崩壊以降は坂道を転がるように「失われた30年の道」を歩んできたことが如実に窺える傾向だったのです。
とりわけ当初の「失われた20年」を経たのちの、2012年12月就任の故・安倍元首相以降のアベノミクスの円安政策によっては、さらに急速に日本の国力を衰退させたことが顕著な傾向となっています(ただし、輸出大企業の売上という業績は円換算では好調に推移)。
実際、「一人あたりGDP」は安倍政権の2013年以降から、世界で20位以下に落ち込んでしまい、ずっと横ばいを辿っています。
アベノミクスがいかに国力を衰退させる弊害をもたらしたかが鮮明なのです。円を安くして、大企業の見せかけの売上のみに貢献したのです。
故・安倍元首相は、アベノミクスの2019年までの7年間で雇用が499万人増えたと胸を張りました。
しかし増加の7割は、賃金下落をもたらすにすぎない非正規雇用労働者でした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
次回は、 「国会議員も地方議員も報酬と待遇がよすぎて世襲と税金泥棒の巣窟となっている日本の議会制民主主義」 というテーマでお届けしたいと思います。
次回をどうぞご期待くださいませ。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)