【積極的心構え】
それは、数年前の話だった。
ユキオがまだ理容室をやっていた頃の話である。
当時は、リフォームの営業マンとして活躍していた。
その時の成功哲学のプログラムを聞く事によって、トップ営業マンになり有頂天になっていた頃である。
営業の合間に、ユキオの店に顔を出してコーヒーを飲んでいた。
ユキオの店は、元コンビニがあった場所でかなり広かった。
そのため、大きなカウンターがありショットバーのような雰囲気だった。
それは、お客様をおもてなしするためのユキオのこだわりだった。
「今日は何しに来た?」
店に入るとぶっきらぼうに声をかけてきた。
「コーヒー飲んでいいかな?」
「カウンターにあるから自分で入れて」
ユキオはそのためにカウンターを作ったのだが、髪を切りにきたのかコーヒーを飲みにきたのかで、段取りが違うのである。
みつおは自分でコーヒーをいれて飲みながら本を読んでいた。
仕事が落ち着き、みつおの横に座ってコーヒーを飲み始めた。
「なんかいい事でもあったのか?」
「うん、実はさ、この成功哲学で営業が上手くいってトップ営業マンになったんだよ」
ユキオは黙ってジーっと見ていた。
「やっぱり積極的心構えが大切なんだな」
みつおはプログラムの話を始めた。
興味があればユキオにも成功哲学のプログラムを勧めようと思ったのである。
しかし、ユキオはしばらく黙ってコーヒーを飲みながらタバコを吸っていた。
仕事で疲れているのだろうと思ったのだが
「ところで、お前はなんで消極的なの?」
「えっ?」
みつおは面食らってしまった。
積極的心構えになって、トップ営業マンになった話をしているのに、そんな質問がくるとは思っていなかった。
「いや、あの、俺は消極的じゃないよ、積極的な心構えになって成功したって話をしているんだよ」
「そのプログラムで積極的になったんだろ、お前はなんで消極的なの?」
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