いつもお読みいただきありがとうございます。
第80回目の淺野幸彦メールマガジン「リベラルアーツ事始め」をお送りします。
前回と今回、二回に分けて『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(*1)という、データや事実にもとづき思い込みを排して、世界の貧困、感染症、人口、教育問題などの現状を正確に理解していく助けとなる本を紹介・考察しています。
前回は『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』載っている「世界の事実」に関するクイズ、チンパンジークイズ(*2)を紹介、考察しました。
まだの方は、是非チャレンジしてみてください。
(*1)『ファクトフルネス』:
https://tinyurl.com/mrx2cas4:
(*2)チンパンジークイズ:
https://t.co/M5vP0DrUm4
今回は、前回予告したように世界に対する認識と実態との間におけるさまざまなギャップを生み出す人間の10の本能(思い込み)を紹介し、その原因と克服方法を見ていきましょう。
人間は最新の情報にアクセスできる環境にいながら、本能や思い込みに影響を受け、ありのままの世界を正しく理解していないケースが多々あります。
毎日新しい情報に触れていても、最先端の技術を知っていても、高い知能を持っていても、これらの思い込みを抑えられなければ、チンパンジークイズの正答率がチンパンジー以下になってしまいます。
様々なバイアスや先入観にとらわれないで、事実に基づいて世界を見ることが必要です。
本書でロスリング氏は、「人間は世の中を『ドラマチックすぎる世界の見方(dramatize instinct)』で見てしまう傾向がありこれが事実を歪めている」と指摘しています。
その理由を明らかにしていき、「ファクトフルネス」つまり「事実に基づく世界の見方」の習慣を身につけるべきだと説いています。
尚、前回も書きましたが、この書籍は、新型コロナ禍・パンデミックの最中、第一次緊急事態宣言が出された2020年4月から始め、毎回メディアに取り上げられている様々なトピック、テーマ、そしてリベラルアーツを巡っての内容で、もう150回以上を数える「社会人向けの淺野幸彦のメディアリテラシー・オンライン講義」でも取り上げました。
「社会人向けの淺野幸彦のメディアリテラシー・オンライン講義」は毎週末土曜日か日曜日に開催しています。
ご興味のある方は、下記、私のメール(*3)に、メッセージをお送りください。
日程他詳細をお知らせして、オンライン講義のグループに招待します。
(*3)淺野幸彦メールアドレス:ezy02025@nifty.com
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◆ニュースやソーシャルメディアから
情報を得ることに積極的な人ほど
とらわれる「思い込み」
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世界には戦争や災害が絶えず、その程度はどんどん悪化しているように思えます。
また格差は広がり、貧困に苦しむ人の数は増え続けている……。
ふだん当たり前のようにメディアで流れてくるそんな言葉や映像の数々。
ニュースやソーシャルメディアから情報を得ることに積極的な人ほど、先入観や思い込みにとらわれやすい傾向があります。
「わるいニュースの方がよいニュースよりも人間の記憶に長く残ってしまう」とか、「昔はよかった」などというよく耳にする考え方です。
ロスリングさんは、私たちはこうした思い込みをしてしまうのかを、「人間が持つ10の本能」というポイントから、ていねいにわかりやすく解き明かし抑え込む方法を丁寧に説明しています。
「10の本能」は以下の通りです。
1.分断本能
2.ネガティブ本能
3.直線本能
4.恐怖本能
5.過大視本能
6.パターン化本能
7.宿命本能
8.単純化本能
9.犯人探し本能
10.焦り本能
では、その世界を正しく見るために排除すべき「10の本能」について、一つ一つ簡単に見ていきましょう。
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◆1.分断本能
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分断本能とは、「世界は分断されている」という思い込みです。
世界を二分法的、二極化して見る傾向です。
これはあなたにも経験があるのではないでしょうか?
世界の物事やグループは2つのグループに分かれ、両者の間には決して埋まらない溝があると考えるものです。
人は誰しも、さまざまな物事や人々を2つのグループに分ける傾向にあります。
「自分の仲間」と「それ以外の人たち」とに分ける考え方ですね。
でも実は世界はそんなに単純ではありません。
単純でないものを単純に切り分けようとすることで矛盾が生じ、誤った世界に見えてしまうという本能です。
例えば、世界の先進国と途上国の間で、格差はますます広がっていると思うかもしれません。しかし実際には、その格差は年々縮まっていることが明らかになっています。
解決策は、データや統計の「平均」ではなく「分布」に注目することです。
分布を見ると、2つのグループに溝や分断がないことに気づくかもしれません。
2つではなくせめて4つに分類するという方法も有効です。
世界の所得レベルも単純に「途上国と先進国」に分けるのではなく、1日あたりの所得に応じて4つのレベルに分けて、そのレベルの変化がいかに人間の生活の質を変えていくのかという具体的なデータに基づく説明は説得力があります。
その視点で見ると、世界は明らかに良い方に変化しています。
これにより、世界の解像度が格段にアップし、思い込みに振り回されないようになります。
追記:一方では、例えば、世界の最富裕層の10%が全世界の所得の40%近くを占有していることや、アメリカ合衆国などの先進国の中で、民主主義の基本である熟議や議論が機能せず、合意形成ができず政治的な分断、ディスコミュニケーションがますます進んでいるように思われますが、これはまた別の機会にきちんと考察します。
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◆2.ネガティブ本能
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ネガティブ本能とは、「世界はより悪くなっている」という思い込みです。
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