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習近平氏「鎖国」へ、200年遅れの政策固執 高まる「中所得国の罠」リスク

勝又壽良の経済時評
  • 2024/03/14
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地方政府に大きなウミ 「鎖国」で安全確保へ 決定的な中所得国の罠 生きているマルクス教 中国の全人代(国会)は3月11日、7日間の全日程を終えた。24年の経済成長率目標は、「5%前後」を掲げたが、具体的な経済支援策を明示しなかった。一方、明確になったのは「国家安全」である。次のような内容である。「中国の国家安全保障のシステムと能力を近代化する」ための法案を制定し、国防教育に関する法律を改正することを決めた。中国は2月、国家機密保護法を改正し、制限される機密情報の範囲を日常行われる「業務上の秘密」にまで広げている。 こうして、中国が国家安全対策を固めるのは、始まった経済危機の裏返しである。中国共産党は、「和平演変」という国内民主化運動による共産党崩壊を最も警戒している。旧ソ連や旧東欧の社会主義国が民主化したのは、西側諸国の働きかけの結果という誤った見方に立っている。いずれも国内経済が立ちゆかなくなり、共産党政権が自然崩壊したのが真相だ。中国は、不動産バブル崩壊による打撃が、極めて大きいことを自覚した結果、「国家安全」という隠れ蓑を用意したのであろう。「鎖国」へ逆戻りである。 中国が、こうした時ならぬ「国家安全」重視政策に転換したのは、習近平国家主席による決定である。中国共産党政権が動揺することは、習氏にとって自身の政治生命に関わる重大事態である。習氏が自己の安全を担保するためには、「国家安全」という御旗を立てることが必要である。習氏は、巧みな形で自己保身のために国家政策を転換させた。 地方政府に大きなウミ 中国経済の最大の問題は、不動産バブル崩壊によって地方政府が莫大な債務を背負っていることだ。中央政府は、習氏が国家主席に就任以来、インフラ投資を核にして経済成長率を押し上げてきた。その実行部隊は、地方政府であった。中央政府は、高めの経済成長率目標を掲げると、地方政府にインフラ投資を割当て実施させてきたのだ。その財源は、地方政府に不動産バブルによる土地売却益を充当させた。極めて杜撰な資金調達であった。 地方政府は、矢継ぎ早のインフラ投資増大計画に対応すべく、「融資平台」という資金調達と投資実行の組織を立上げた。これを足場に、「膨大な隠れ債務」を作りながらも、中央政府の要請に応えてインフラ投資と行ってきた。むろん、地方政府独自の計画でインフラ投資を行った。これらの資金も全て、融資平台の隠れ債務に求めてきたのだ。

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  • 勝又壽良の経済時評
  • 経済記者30年と大学教授17年の経験を生かして、内外の経済問題について取り上げる。2010年からブログを毎日、書き続けてきた。この間、著書も数冊出版している。今後も、この姿勢を続ける。
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