3月15日は世界睡眠デーだそうで、我らが『モーニングショー』でも睡眠障害の問題を取り上げていた。
よい睡眠がとれないと認知症リスクがあがるとか、長くゆっくり眠れる人の話を取り上げて、「睡眠の質が悪いのでないか」と注意を促したり、よい眠りにものすごくこだわりを見せていた。
私も高齢者を専門とする精神科医をやっているので、眠れないという悩みの人はものすごくたくさん診ている。
ただ、高齢者にはなるべく睡眠導入剤を使いたくないので、眠れないのを気にするとよけい眠れなくなると言ったり、眠れないで死ぬということはありませんからというように返すことが多い。
私が学んできた森田療法でも、眠れないことより眠れないことを気にする方が悪いと考えられている。
眠れなくて死ぬことはないのはわかるが、健康に悪いのでしょとか、認知症になりやすいんでしょと反論されそうで嫌になる。
私自身、糖尿病が重いせいか、夜中に2時間おきに目が覚める。ただ、その後眠れているからよしとしている。確かに夜中に目が覚めて、その後眠れないようならうつ病の可能性があるので、ほかの症状が出ていないか聞いたりもするし、うつ病が疑われる場合は試しに薬を出すこともある。
しかし、夜中に目が覚めるとしても、その後眠れるなら、ある程度歳をとったら仕方がないと自分でも考えている。少し疲れがたまってゆっくり寝たい日だけ睡眠剤を飲むようにしている。
このコラムを書くにあたって睡眠デーのことを調べていると、睡眠の休養感が低いと高血圧や肥満や糖尿病のリスクが上がるという。ただ、私自身の経験では糖尿病になる前はとてもよく眠れていたし、休養感も高く、酒を飲んで10時くらいに寝ると5時までぐっすり眠れて、すぐに仕事に入れた。糖尿病になって夜中に何度も目が覚めるようになってからは、朝の5時だとまだ眠くて7時くらいまでグズグズしている。睡眠の質が悪いから糖尿病や高血圧になりやすいのか、糖尿病だと睡眠の質が悪くなるのか、卵が先か鶏が先かがよくわからない。
さて、その番組では、睡眠の質を調べるためにスマートウォッチやスマホの睡眠アプリを使えという話もしていた。
我らが玉川徹氏も自分もやってみたいという風に答えていた。
コロナのときもそうだったが、この番組はどれほど一般視聴者を強迫的にしたら気が済むのかと思ってしまった。
番組の解説をしていた医者にとっては患者が増えていいのだろうが、どうしても寝ないといけないという強迫観念も、眠れていても眠りの質がよくないといけないという完全主義もメンタルヘルスにとても悪いものだ。
健康のためと称して眠りの質を取り上げることで、かえって不眠もうつも増やすのが、ワイドショー健康志向の大罪と言えるかもしれない。
この記事は約
NaN 分で読めます(
NaN 文字 / 画像
NaN
枚)