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週刊Life is beautiful 2024年3月19日号: 日本だけが経済成長していない理由、鯨の歌を聞くデバイス

週刊 Life is beautiful
今週のざっくばらん 日本だけが経済成長していない理由 先日、(以前から面白いと注目しており、対談をしたこともある)成田悠輔氏がAbema TVで「何で日本だけ成長してないんですか?」という質問に対して、「色んな要因が組み合わさってとても複雑なことが起きている。」とあえて明確な回答をせず、逆に特定の原因に断定する人を批判する発言をしていました。成田氏にしては、いつものキレの良さに欠ける発言だと思いましたが、私だったら、あの場面でどう答えるだろうと考えてみました。 確かにさまざまな要因があることは確かですが、30年間も低迷が続いているのは異常だし、大手IT企業を抱える米国だけでなく、ヨーロッパの国々とも大きな差が開いているのには、何か構造的な原因があると考えるべきだと思います。 そこで私なりの答えは「社会の硬直化」です。 日本経済は、1955年から1973年までの19年間、年平均で10%と驚異的な成長を成し遂げました(高度経済成長期)。1968年には、国民総生産(GNP)が当時の西ドイツを上回って世界2位となりました。日本人が、エコノミック・アニマルと呼ばれて世界から脅威の目で見られていたのも、この頃です。 この時期に、新卒一括採用・終身雇用・年功序列・護送船団方式・官僚組織・経団連などの日本特有の社会システムが、日本社会の中に浸透し、その成功体験により、日本社会とは切っても切れない、頑丈なシステムになってしまったのだと私は見ています。 日本経済は、不動産バブルが崩壊した1990年まで好景気を続けましたが、その後、失われた10年、20年、30年へと突入したのです。 特に、1990年以降は、パソコン、インターネット、スマートフォンに代表されるデジタル革命が起こり、それに伴って、通信、出版、小売、流通などの業界にも大きな変化が起き、GAFAに代表される、巨大IT企業が企業価値を高めただけでなく、デジタル技術を使いこなすベンチャー企業群が、旧態依然とした既存のビジネスを駆逐して成長する、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が起こりました。 日本の低成長の一番の原因は、その波に乗り遅れたことにあります。高度成長期に作られた日本特有の社会システムが、痛みを伴う変化を阻害する役割を果たし、結果として、社会の新陳代謝が進まず、大企業が優秀な人材を抱えたまま競争力を失い「ゾンビ化」し、一方で、DXを起こすべきベンチャー企業には、人材も資金も集まらない、という状況が長く続いたのです。 日本政府は、既存の企業を可能な限り倒産させない・企業による解雇を避ける、ことこそが雇用を守ると言う考えの元に、さまざまな政策を実行したのに対し、米国が、新しいビジネスこそが雇用を生み出すという発想のもと、自由競争を促す政策と、ベンチャー投資を促す税制で、社会の新陳代謝を促し、これが大きな違いを生み出したのです。 しかし、正社員の解雇を抑制したままでは、日本の製造業がグローバル経済圏で戦えないことを認識した日本政府は、苦肉の策として、2004年に派遣労働を大幅に緩和しましたが、これが、新卒一括採用と相まって、「大学卒業時に正社員になれるかなれないか」が一生を左右する、やり直しの効かない社会を作ることになってしまいました。 その後、日本は、アベノミクスの弊害である円安と、急激な少子高齢化に見舞われていますが、それらは、低成長の原因ではなく、結果であり、やはり根本の原因としては、高度成長期に作られた日本の社会システムが、その成功体験ゆえに「硬直化」し、今の時代に必要な、社会の新陳代謝を阻害する形になってしまったことにあると私は見ています。 今、話題になっている自民党議員による「ウラ金作り」も、日本の社会システムの一部であり、そんな自民党を勝たせ続けてしまう有権者の行動も、「そうは言っても、自民党にしか国は運営できない」と言う硬直化した考え方の結果なのです。

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