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太ると体に悪いのか

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室235 .2024.3.24. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** 太ると体に悪いのか  「体に悪い」が、何を定義するのか難しいところです。ただ、私たちにとって1番の願いは、健康で長生きすることではないでしょうか。  まず、太っているのか、痩せているのか判断する時に用いられる指標としては、BMI(Body-mass index )と言う指標があります。BMIは体重(Kg)を身長(m)の2乗で割ったもので、例えば、私ですと、身長170cm、体重70kgなので70÷(1.7×1.7)となり、24と言うことになります。 BMIの標準値は22であり、BMIが22より高いと太っている、22より低いと痩せていると言うことになりますので、私はまだまだ太っていると言えます。一方で、身長170cm、BMI22から導いた私の標準体重は22×1.7×1.7となりますので、63.5kgと言うことになります。  さて、このBMI、一体どのくらい太っていると寿命が短くなるのでしょうか。報告にもよりますが、太っている方だとBMIが30を超えたあたりから死亡リスクが上がると言われています。私ですと86.4kgを超えたあたりから死亡リスクが上がることになります。しかしながら、報告によりけりですが、痩せている場合、BMIが20を下回ったら死亡リスクが上がると言われており、死亡リスクが上がる程度は太っている人よりも痩せている人の方が高いと言う報告が圧倒的に多いことは事実です。 なんと、長生きすると言う観点から考えた場合、少し位の小太りは許容されるが、少しでも痩せていると死亡リスクが高くなると言うことなのです。  太っている方と痩せている方、どちらが健康的かなかなか難しいところではあります。最適な解答はありませんが、年齢に応じて分けて考えていかなければいけないような気がします。若い間はエネルギー制限や体重制限を行い、メタボ対策を、65歳以上の高齢者になってくれば、逆に十分な蛋白を取り、筋肉量を維持するフレイル対策をしなければいけないわけです。(フレイルとは、身体機能や認知機能が衰えた虚弱体質のことです)  病気によっても違ってくると思います。例えば、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管系の疾患は、例外はありますが、メタボによって起こってくることが多く、体重制限やコレステロールの制限などが必要となってきます。一方、癌などの悪性新生物や、繰り返す肺炎などの炎症性疾患は、フレイル状態をきたしやすく、しっかりと栄養を取らなければダメで、逆に、しっかりと体重の維持をして蛋白を摂取することが大切となってきます。  私が見ている患者さんの多くは、肺癌などの癌患者さんや、非結核性抗酸菌症、アスペルギルス感染などの感染症の患者さん、COPDなどの呼吸不全をきたす患者さん等になります。そのような患者さんの場合、痩せてくると命に関わることが多く、メタボ対策よりもフレイル対策としてしっかりと栄養をとることが大切になります。 若い時と同じように、癌になっているにもかかわらず、メタボ対策を行い、食事制限を行うと、返って寿命が短くなってしまうことになります。私が見ている限り、しっかりと体重が維持できている肺癌患者さんはなくなる事はありません。またCOPDなどの呼吸器疾患の場合、呼吸不全が進行してくると痩せていきます。  太っていると一概に悪いのか、なかなか難しいとは思いますが、確かにメタボ対策が必要な若年者では太っている事は、心血管系の疾患発症リスクにもつながり悪いことになると思います。しかしながら、65歳を超え、高齢者になってくると、むしろフレイル対策が重要であり、太っていることが必ずしも悪いこととは言えない訳です。  メタボ対策を行うのか、フレイル対策を行い、しっかりと食事を摂取するかどうかと言う事は、病気によっても、年齢によっても変わってくるわけですので、一概に、減量すると、体に良い、太っていると、体に悪いとは言えないわけです ************************* ドクター畑地の診察室235 .2024.3.24. 毎週日曜日お昼に配信予定です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2024年02月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2024/02

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