【痛くない死に方　2024年第12号】京都ALS嘱託殺人事件…なぜこれは安楽死ではないのか？ なぜ「懲役18年」は長いと思うのか？

２０２４年　第12号 【長尾和宏の痛くない死に方】 長尾和宏です。春がそこまできています。能登半島では、輪島の朝市が今年初めて 金沢で復活したというニュースを見ました。 店先で涙ぐみながら、干物を売っているおばあちゃんの顔をみてもらい泣きして しまいました。何十年も朝市に立ち続けてきたおばあちゃんが、突然、平和でさ さやかな日常を奪われた悲しみ、苦しみを抱えながらの、今日の笑顔がほんとう に素敵でした。しかし輪島の町はまだ、復興にはほど遠い姿。 崩壊した建物が、手つかずのままに見えます。政府がどこまで能登半島の復帰に 本気なのかもよく見えません。ボランティアの人が言うには、まだ、輪島の繁華街 は焼け焦げた匂いがしているといいます。再建の道は、遠いようです。 阪神淡路大震災のとき、３か月後にはほぼ瓦礫はなくなり解体したビルの撤去作業 も済んでいたように思います。それに比べ、今の輪島の状況は……ニュースを見る たびに、能登のことは二の次で、裏金問題で国会の時間を無駄に使い、政倫審でも 平気で「記憶にない」と嘘を言い続ける政治家に心底うんざりしています。 なぜ、あんなに平気で嘘がつけるのでしょうね。いや、今に始まったことではない。 でもなんというんだろう、国会や昨今の政治家の答弁を見ていてとても嫌な気持ち になるのは、「どうして誰にも、小学生にだって嘘とわかるような嘘をつくのか？」 ということなのかもしれません。変な言い方だけれども、バレないように必死に 嘘をつこうという、嘘の品格がないのです。 ある研究によれば,、人間は一日に２００回も嘘をついているという報告があります。 それくらい嘘をつかないと、現代社会の人間関係は構築できないということなのかも しれません。「え？　私、嘘なんてついてないわ！」咄嗟にそう思った読者もいるかも しれない。でも、自分に嘘をついていることもカウントしてみたらどうでしょうね。 たとえば僕もこの前Xのスペースで、「もう二度と酒は飲みません」と言ってみたも のの翌日には飲んでいました、発言していたときから、自分でそれは嘘だと思っ ていました。４月の僕の大阪と東京のライブ「春の別れ」にまだ１名しか申し込み がありません…と言っているけど「ほんとは５人くらいは申し込んでるやろ」と本音 では思っています。「長尾先生、お久しぶりです～」と町で声をかけられて、やあ、 久しぶり！　と会釈をしてみるけど、実は誰かわからないこともしょっちゅうあるし。 そう考えると確かに、朝起きてから寝るまでのあいだ他人につく嘘、自分につく嘘 を数えたらキリがないかもしれません。見た目にしてもそうです。女性のお化粧も、 男のヅラも（僕は普段はつけてないけど）ある意味、嘘といえるでしょう。 昨今では、ｆａｃｅｂｏｏｋやＩｎｓｔａｇｒａｍの写真で自分を若く加工したり 普段の暮らしぶりを「盛る」人も大勢いると思いますが、それだって嘘っちゃあ嘘 でしょう。マッチングアプリに、自分を盛らないで登録している人間なんて、誰も うないでしょうからね。だけどまあ、人の迷惑をかけない嘘なら、別にかまやしない と思います。しかしいま、国会で政治家たちがやっている嘘は、それとはまったく 種類の違う嘘。品のない嘘。すぐばれる嘘。国民を裏切るような嘘……etc. 一昔前ならば、「あいつは嘘つきだ」というレッテルを貼られたら、その人は社会的 信用を失ってしまう。社会人になったら、一番失ってはいけないもの。それは、お金 ではなくて、信用だったはずです。嘘と信用は等価交換だったのです、かつては。