いつもお読みいただきありがとうございます。
第82回目の淺野幸彦メールマガジン「リベラルアーツ事始め」をお送りします。
今回は新型コロナ禍がパンデミックとなり全世界で猛威を振るい始めた4年前、2020年3月18日にドイツの当時の首相メルケル(*1)さんがテレビで国民に向けておこなったスピーチを取り上げてみたいと思います。
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まっすぐに国民に向かって語りかけることの大切さ
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彼女のスピーチは民主主義国の首相として一人ひとりの国民に訴えかける感動的であると同時にロジカルで説得力のある政治家とはかくあるべきという内容でした。
適切に構成され明確に書かれたスピーチ。
しかし、原稿にはほとんど目を落とさず、まっすぐに国民に向かって語りかけ、そして主題の繰り返しと変調を通じて、緊急性を訴え、国民の共感と連帯を得ることができ、理解と責任ある行動を呼びかけることに成功しました。
また「私のように、移動や行動の自由が苦労して勝ち取った権利であった者にとって、(国家による)そのような制限は絶対に必要な場合にのみ正当化することができる」と、旧東ドイツ出身という自らの体験から語りかけたことが高く評価されました。
開かれた民主主義国のリーダーとはいかなるものかということを痛感させられます。
当時、日本のメディアでは簡単に要約された内容が報道されただけでしたが、ベルリン在住のギュンター律子(*2)さんがいち早く全文和訳して、FACEBOOKやブログで公開してくれました。
(*1)メルケル:
https://tinyurl.com/mr2ee4wb
(*2)ギュンター律子:
https://tinyurl.com/2vmetxz6
もちろん、政治は理想や希望を追い求めるばかりではなく、なによりもリアル(現実)の場を作るものでなくてはなりません。
そのために様々な瑕疵も飲み込まなくてはならないことも彼女は知悉しています。
ところで、当時この国のプライム・ミニスター安倍晋三さん(1954年7月17日生れ 65歳)は、メルケルさん(1954年9月21日生れ 65歳)と同じ年でした。
年齢は同じでも、残念ながら人間の器、国民を思う気持ちの深さ、真摯さ、誠実さ、政治的手腕、判断力、責任感、信頼度はいかがなものだったかと感じ考えてしまいました。
そのことは主権者である私たちの問題でもあります。
パンデミックはいずれまた必ず訪れます。
そのことを忘れないように、以下、長文ですがメルケル首相(当時)のスピーチを再記しておきます。
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メルケル首相(当時)のドイツ国民に向けたスピーチ全文
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親愛なる国民の皆さん。
現在、新型新型コロナウイルス感染症感染症は私たちの生活を著しく変えています。日常生活、公的生活、社会的な人との関わりの真価が問われるという、これまでにない事態に発展しています。
何百万人もの人が職場に行けず、子供たちは学校や保育施設に行けない状況です。劇場、映画館、店などは閉鎖されていますが、最も辛いことは、これまで当たり前に会っていた人に会えなくなってしまったことでしょう。このような状況に置かれれば、誰もがこの先どうなるのか、多くの疑問と不安を抱えてしまうのは当然のことです。
このような状況の中、今日、首相である私と連邦政府のすべての同僚たちが導き出したことをお話ししたいと思います。
オープンな民主主義国家でありますから、私たちの下した政治的決定は透明性を持ち、詳しく説明されなければなりません。決定の理由を明瞭に解説し、話し合うことで実践可能となります。
すべての国民の皆さんが、この課題を自分の任務として理解されたならば、この課題は達成される、私はそう確信しています。
ですから、申し上げます。事態は深刻です。どうかこの状況を理解してください。東西ドイツ統一以来、いいえ、第二次世界大戦以来、我が国においてこれほどまでに一致団結を要する挑戦はなかったのです。
連邦政府と州が伝染病の中ですべての人を守り、経済的、社会的、文化的な損失を出来る限り抑えるために何をするべきか、そのためになぜあなた方を必要としているのか、そしてひとりひとりに何が出来るのかを説明したいと思います。
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