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「文明の万華鏡」第143号
(2024年3月27日)
Japan and World Trends
はじめに
何もかももやもやして、きっちりした議論ができない時です。一つには、自民党の裏金問題がいつまでも
片付かず、今後の日本のガバナンスがどうなるのかわからないことがあります。今のままでは自民党は続
けられないはずですが、地方、選挙の現場の論理では、裏金が必要となる構造はなくならないので、いつ
までもがたがたやってないで、いい加減けりをつけろというところでしょうし、有権者の大多数もそう感
じていることでしょう。このままでは総理の訪米も無理でしょう。
もう一つは、その米国での大統領選挙の帰趨。「トランプになったら大変だ」という声がもっぱらですが、
第一期は私もそう思いましたが、今回はなぜか、危機感を感じていません。多分、日本が自主防衛力強化
の方向に進んでいますし、中国の経済が落ち目の方向にはっきり転換しているからでしょう。「脱イデオ
ロギーで、何でも取り引き」というトランプのやり方は、けっこう透明で信頼性すらあります。
もやもやしているもう一つの大きな理由は、経済でしょう。空前の株高にありますが、これは米国も日本
もカネ余りがまだひどい上に、中国人までが国内より海外に投資しようとしていることに原因があります。
米国でのマネー・サプライ2は、2020年2月から急増を始め、23年には減少を始めたものの、今でも2020年
2月より34%多い、約15兆ドルの水準にあります。金持ちにはまだカネがだぶついている中で、金融引き
締めが始まっているという、相場乱高下必至(金持ち達がもうかる投資対象を求めて右往左往するため)
という情勢にあります。
あとはもちろん、中国経済が停滞を喧伝されながら、電気自動車は世界を制覇する勢いにある(あった)
矛盾。どちらが本当なのかと思ってしまいます。米国やEUで現地生産することもなく、政府補助金で支え
たEVを大量に輸出する、子供っぽい自分勝手なやり方がいつまで持つのか、いやEV自体、まだ未熟な商品
であることがわかっていつ大崩れするかわからない。と思っていたら、米国ではEVの売れ行きが落ちて、
ハイブリッドの売れ行きが絶好調、中国では以前の電動自転車と同様のEVの墓場が現れた――こういう報
道が相次ぐようになりました。
ロシアは、大統領選をなんなく乗り切ったものの、22日のテロ事件では150名近い死者を出す状況。詳し
いことは本文で。
インド経済が急成長というのも、どうも不透明で。外国資本が流入している間は急成長するでしょうが、
地場資本だけで事業、特に製造業をするには、インド人に足りないところがある。彼らはアイデアは素
晴らしく、出足は速くても、現実の利権・規制・慣習の壁を十分認識していないことが多く、実行力が
足りないところがある。そして多数の人数をマネージしていく能力に欠ける、と言うか、労務管理が乱
暴なところがある。こういう情景を何度も見てきたからです。
まあ、いろいろありますが、日本は自動車だけでなく、素材、部品生産で、しっかりした経済基盤を
維持しています。欧米にケチョンケチョンに批判され、利用されてきたおかげで、企業のマネジメント
も何とかダイナミックかつ合理的になってきたところが増えています。
というわけで、今月の目次は次のとおりです。
ロシアでのテロと、アゼルバイジャンとトランプ
ネオコン時代の終わり――それは何を意味するか
ロシア大統領選――プーチンの勝利はロシアの未来の敗北
ロシアは周辺地域に攻め込むのか
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