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肺癌患者の予後を決める一つの事実

ドクター畑地の診察室
ドクター畑地の診察室236.2024.3.31. 現役呼吸器内科、総合内科専門医 畑地治です。 世の中に「○○飲んだらすべての病気が治った」「○○制限食をとったらすべての人が健康になる」等、出鱈目情報が溢れています。現代医療の特徴は精密医療で万人に効くような治療はありません。治療方法は個人によって全く違います!おそらく日本で一番多くの呼吸器疾患患者(肺癌、喘息、COPD、肺炎など)を診療する専門医が、最先端の精密医療を解説&ネットでは出し辛い医療や治療の裏側も配信! https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** 肺癌患者の予後を決める一つの事実  3/30付の中日新聞にも大きく掲載されたわけですが、松阪市民病院発のデータが世界的な医学学術誌である「JAMAオンコロジー」に掲載されました。単独の一地方の公立病院のデータが、このような間権威ある雑誌に掲載される事は、極めて稀であり、大変嬉しく思っております。  どのような内容であったのかお話しさせていただきます。一般的に進行肺がんの患者さんの治療を決定する入り口に当たるのは、PS(パフォーマンスステータス)と言うものを用いて肺がん患者さんの全身状態を評価することから始まります。全く問題なく活動できると言うPS 0から全く動けないと言うPS 4まで5段階分類して、その度合いに応じて治療方針を選択していくと言うものです。しかしながら、この指標は、極めて主観的であり、判定する医師によって、かなり違ってくることが現実でした。例えばA医師がPS1と判定しても、B医師がPS 2と判定するなど医師の主観によって左右されます。数十年前から、このような主観的な批評が、がん患者を評価するために用いられており、これを客観的な評価に変えることができないのかどうかと言うことを検証したのがこの論文の内容です。  2021年12月より松阪市民病院に通院している肺がんの薬物療法受けている患者さん、おおよそ120名にソニーの協力を得て、電子デバイスを渡しました。その電子デバイスは今患者さんが動いているのか、じっとしているのか、また自転車に乗っているのか歩いているのか走っているのか、車に乗っているのか正確に計測することができます。2週間その電子デバイスを患者さんに装着していただき、その間に患者さんがどれだけ歩いたのか、どのくらいの活動量で運動したのか、1日に何歩歩いているのか計測したわけです。そうすると患者さんの生命予後ともっとも相関するのは1日の平均歩行距離であることがわかりました。  1日の平均歩行距離を用いると、肺がん患者さんの生命予後をかなり正確に予測でき、パフォーマンスステータスによって分類するよりも正確であることがわかりました。1日におおよそ770メートル以上歩いている人と、それ以下の人と比べると、明らかに770メートル以上歩いている肺がん患者さんの方が長期生存できたわけです。  今治療を受けている肺がん患者さんが長生きできるかどうか、それを決定する1つの指標が、その肺がん患者さんの1日の歩行距離であることがわかりました。では、肺がん患者さんが意識して歩行距離を伸ばせば長生きにつながるかどうか、現時点ではまだわかっていません。しかしながら、どのような病気でもそうですが、元気に歩く患者さんと言うのは長生きします。活動的でなく、家に閉じこもりがちな患者さんは、生命予後が短いことが多いと思います。  今回は肺がん患者さんで、歩行距離が長い人は長生きする事を示したわけですが、このことは肺がんだけではありません。例えば、タバコによって起こってくるCOPDと言う病気も、難治性で知られている間質性肺炎と言う病気も、毎日活動量が多く動いている人は予後が良いことが知られています。  春になりました。これを書いている、3月30日は日差しが暖かく絶好の運動日和です。本日午後はぜひ屋外をランニングしたいと思っています。皆さんも運動いかがですか。 ************************* ドクター畑地の診察室236.2024.3.31号 毎週日曜日お昼に配信予定です。 お問合せ、感想などはコチラまで zm.magumagu@gmail.com 畑地 治 https://zipangu-management.co.jp/culture_000/hataji/ 三重県出身 自治医科大学卒業後、僻地診療、三重大学勤務を経て、呼吸器内科医師となる 松阪市民病院院長 https ://mie-matsu-kokyuki.mars.bindcloud.jp/ https://www.facebook.com/mch.respiratory.center/ 診療の傍らFM三重で「肺、おさむに聴け!radioを聴いてらんらんらん(lung lung lung)」という毎週月曜日放送の番組を担当 https://fmmie.jp/program/getsumoku/hiosamu.php ***************************** ★お知らせ★ 好評発売中『ドクター畑地の診察室』バックナンバー 1ヶ月分を220円で購入できます。気になった号がある方はぜひチェックしてみてください! ◆2024年02月 https://www.mag2.com/archives/0001688238/2024/02 2024/02/25 新しい検査の幕開け 2024/02/18 バレンタインdayに思う 2024/02/11 マラソン大会エントリー 2024/02/04 救急車の7,700円 ◆2024年1月

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