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No. 84「花綵(かさい/はなづな)列島」「粟散辺土(ぞくさんへんど)」の日本

淺野幸彦メールマガジン「リベラルアーツ事始め」
  • 2024/04/08
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いつもお読みいただきありがとうございます。 第84回目の淺野幸彦メールマガジン「リベラルアーツ事始め」をお送りします。 今回は「花綵(かさい/はなづな)列島」と「粟散辺土(ぞくさんへんど)」、それに関連する言葉について考えていきます。 ******************** ◆「花綵(かさい/はなづな)列島」は美称 ******************** 「花綵(はなづな)」は、植物の花・実・葉などを綱状に編んで作った色とりどりの美しい飾りです。 「花綵(かさい/はなづな)列島」は、日本列島やアリューシャン・千島・琉球のように島々が弓なりに花を編んで作った飾り、花綵(はなづな)のように美しく連なっている列島のことを指します。 19世紀のドイツの地理学者・人類学者のオスカー・フェルディナント・ペッシェル (1826-1875)(*1)により「WIE EINE GIRLANDE AUFGEREIHTE INSELGRUPPE(花輪のように並ぶ島々:花綵列島)」と命名されました。 (*1) ペッシェル:https://tinyurl.com/28vsjtum ***************** ◆「花綵(かさい/はなづな)列島」 ***************** 色々な説がありますが、現在の考古学的知見では日本列島がアジア大陸から切り離され現在の花綵のかたちがだいたい定着したのは約二万年前のことだと言われています。 もっとも「花綵列島」という命名は、先に記したように最近のものです。 余談ですが、松岡正剛(*2)さんは、日本列島がアジア大陸という大きな扉にくっついた把手のようにも見えるので「把手列島」とも呼んでいます。アジア大陸を開く大きな扉の把手という見立てです。 (*2) 松岡正剛:https://tinyurl.com/3ctfy7jc ************* ◆蔑称としての「粟散辺土」 ************* 「粟散辺土」ないしは「粟散辺地」とは、「辺境の地にある粟粒を散らしたような小国」のことを指します。 中国やインドから見た日本のこと、あるいは中国やインドと比べて昔の日本人が日本のことをそう呼んだのです。 また開国間もない幕末、明治初期の日本は列強諸国から「粟散辺土」と侮られることもあったようです。 ********* ◆Far EAST(極東) ********* Far EAST(極東)などという言葉もありますね。 ヨーロッパから見て東方の果てにある日本などのアジアの地域を指す、ヨーロッパ中心主義的な世界観による言葉です。 かつて日本にはFEN(Far East Network:極東放送網)という放送局も日本にありました。 1997年にAFN(American Forces Network:アメリカ軍放送網)(*3)というアメリカ軍が海外に駐留または配属されている人々に提供している政府の放送サービスに統合された、1945年、日本敗戦後に開局した在日米軍向けの放送局の名前でした。 アメリカのポップミュージックが多く流されていて、英語を覚えるためとか、アメリカのポップカルチャーにあこがれて聴いていた日本人も多かったのではないでしょうか。 (*3) AFN:https://tinyurl.com/5n6e8eja ******* ◆四夷(しい) ******* 古代中国で中華に対して四方に居住していた異民族に対する蔑称で、四夷(しい)(*4)あるいは夷狄(いてき)という言葉がありました。 四方は、東夷(とうい)、北狄(ほくてき)、西戎(せいじゅう)、南蛮(なんばん)です。 中華にとって日本は東夷です。 「夷」は自分たちと比べて野蛮人、あるいは未開人という意味。 (*4)四夷:https://tinyurl.com/4d4kzy2z ********** ◆中心と辺境・周縁 ********** ある時代において中心的だと思い込んでいる地域が、それ以外の地域を辺境や周縁を呼びました。 しかしそれも相対的な思い込みかもしれません。 そしてその思い込みは、しばしば侵略や簒奪、差別の原因、正当化につながる危険なものだということを忘れてはなりません。 ************** ◆『平家物語』の『粟散辺土』 ************** この国のことを「粟散辺土(ぞくさんへんど)」あるいは「粟散辺地(ぞくさんへんち)」という言い方で、平安・鎌倉時代の仏教僧たちがしばしば言及している記録が残っているそうです。 当時、仏教は最先端の学問でもあり中国から多くの高僧が、日本という自称・他称「粟散辺土(ぞくさんへんど)」に渡来して、多くの学僧を育て仏教を広めていきました。 古典でもあちらこちらに散見されますが『平家物語』(*5)にも多分二か所n)に用例があります。 (*5)『平家物語』:https://tinyurl.com/2zwkr4j9 例えば、壇ノ浦の源平合戦で、もはやこれまでと二位殿(清盛の妻)が孫の安徳天皇と入水する場面です。

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