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【Vol.530】冷泉彰彦のプリンストン通信『岸田訪米と日米関係』

冷泉彰彦のプリンストン通信
「『大谷マネー』に変化の兆しか?」  ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手の銀行口座から、巨額のマネーを盗んだ水原一平容疑者の事件は急展開を見せました。連邦の捜査は迅速を極める中で、大谷選手自身は違法行為に関与していないことは立証された格好です。反対に、水原容疑者の手口は極めて悪質であること、動いたカネの総額は、当初報道されていたよりも巨額であることも明るみに出ました。  つまり、大谷翔平という人は一連の疑惑に関しては被害者だということがほぼ100%明確になったわけです。これを受けて、例えばアメリカで大谷選手が超大型のスポンサー契約を結んでいるNB(ニューバランス)は、大谷選手を登場させたキャンペーンを再開しています。  その一方で、3月以来、日本では地上波における大谷選手の出演CMはお蔵入りとなり、その枠は公共広告機構(ACジャパン)のイメージ広告に置き換わっていました。確かに、送金疑惑が取り沙汰されて捜査対象となる中で、メガバンクのCFについては多少抵抗があるというのは分かります。  ですが、それ以外のほぼ全業種の「大谷CM」が放映停止となっていたのは少々過剰だと思います。この問題ですが、一部のアメリカの解説によれば、純粋に被害者である大谷選手は、CM放映停止の損害に関しては弁償を訴えることができるという説があります。また、泣き寝入りするようならアメリカの価値観からは不自然だという声もあります。  この議論そのものにも興味はありますが、もしかすると、アメリカ人には全く理解できないことながら、日本では「世間を騒がした罪」なるものが今でもあるのかもしれません。その変形として、被害者かもしれないが結果的に大スキャンダルに巻き込まれたことで広告塔としては「使えなくなった」という独特の考え方が成り立つのかもしれません。  その場合ですが、大谷選手における「日本の広告マネー」という日本からのカネの流れは細っていくことは考えられます。反対に、これでスキャンダルについては潔白となり、今季は打者として、来季は二刀流として好成績を残せば、MLBでは改めて球界を代表する選手として押しも押されぬ地位に押し上げられるかもしれません。  そうなったら、かつてイチロー選手が「出塁より日本人の喜ぶ200安打の連続記録」を優先させられているように見えたこと、それ以前に多くのMLB日本人選手が「遠い存在」となるのを嫌って英語を話すシーンを避けていたこと、などの制約は完全に外れます。  NBのプロモーションでは、どんどん英語での発信も始めている大谷選手です。こうなると、大谷マネーの流れは、日本発のものが細って、どんどんアメリカ経済に深くコミットするようになるかもしれません。大谷選手の立場からはそうなったほうが、万事スッキリするかもしれませんが、日本のGDPということからは、多少寂しい感じもします。いずれにしても、今後は、そうしたマネーの流れにも注目したいと思います。

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  • アメリカ北東部のプリンストンからの「定点観測」です。テーマは2つ、 「アメリカでの文脈」をお伝えする。 「日本を少し離れて」見つめる。 この2つを内に秘めながら、政治経済からエンタメ、スポーツ、コミュニケーション論まで多角的な情報をお届けします。 定点観測を名乗る以上、できるだけブレのないディスカッションを続けていきたいと考えます。そのためにも、私に質問のある方はメルマガに記載のアドレスにご返信ください。メルマガ内公開でお答えしてゆきます。但し、必ずしも全ての質問に答えられるわけではありませんのでご了承ください。
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