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伏木悦郎のメルマガ『クルマの心』
第542号 2024.4.9配信分
●あなたが経験した最高速度は何km/hですか?
いつまで古臭い昔話を続けるの?そんな声が聞こえてきそうだ。
人間長く生きると話も長くなる。見聞きした情報量の多さが影響し
ているという実感があるが、もちろんそれだけではない。
いったい何時まで『右肩上がりの成長』を続けるつもりなのか?
これは世代論に逃げて答えを先延ばしするのではなく、現代を生き
るあらゆる世代の人々に問いかけたい根源的なテーマだと思う。
『技術の進歩』は現代人の身体機能を大きく拡張した。草創期とな
る19世紀から見れば、クルマはとてつもないスピードを手に入れて
いる。単に身体が負担する労力低減だけを問うなら、ここまで速く
走れる必要はない。
高性能なクルマだけが用意されても、それが走る道路を始めとす
るインフラのレベルアップは不可欠だ。あらゆる条件を異とする不
特定多数が場所と時間を共有する。クルマが一部の富裕層だけの存
在に限られた昔ならともかく、地球上に13億台を超えその大半が都
市部に集中している。
現実問題として、クルマのパフォーマンスは唐の昔に過剰性能の
領域に達している。とくに肝心の人間の身体機能/感覚にとっては
そうで、人力のMAXスピードを遙かに上回る『性能』を大衆が手
に入れて久しい。
スキルも身体能力も価値観も異なる老若男女が、同時に路上に存
在している。誰もがその事実を知っているはずなのに、過剰性能に
ついて語られることはほとんどない。自動車モビリティの健全性を
保つためには、むしろ一定以上のスピードは害悪となりかねない。
100km/hは50km/hの倍速であり、200km/hは100km/hの2倍速……右肩
上がりを是とする論調が絶えないが、果たしてこのような考え方は
健全だろうか。
現実問題として、200km/h以上のスピードを(日常的な環境におい
て)経験した人はどれだけいる?私が運転免許を取得した1970年に
は100km/hを試す環境が整いつつあった。しかし、当時のクルマの
保有は乗用車に限れば約730万台、約810万台の商用貨物車より少な
く、二輪を含むその他を合わせても約1650万台でしかなかった。
さらに言えば、運転免許(全てのカテゴリー)の保有者数は約2650
万人。クルマの保有も免許保有も現在のそれぞれ約3/5倍に膨れ
上がっている。昭和末期約20年、平成以降約30年の合わせて50年余
りの変化を具体的にイメージ出来ている人は、今となっては少数派
であるはずだ。
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